経営を行ううえで「企業のミッション・ビジョン・バリューを持つべき」という声を聞くことが多いと思います。
ですが「ミッション・ビジョン・バリューとは何なのか?」、「必要なのはわかるけれど、どのように作ればいいの?」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ミッション・ビジョン・バリューとは何かを解説していきます。
また後半では、作り方や人気企業での事例もご紹介します。
ぜひ記事をご覧いただき、御社のミッション・ビジョン・バリューの明確化にお役立てください。
企業のミッション・ビジョン・バリューとは?
まずは、ミッション・ビジョン・バリューとはどのようなものか、その定義を紹介します。
企業におけるミッション(Mission)とは
企業におけるミッション(Mission)とは、「企業の使命」です。
「自分たちは、何をするために会社を立ち上げたのか」ということであり、つまりは「企業の存在理由」となります。
ビジョンやバリューにくらべて、ミッションは長期的なものです。
カンタンに実現できることや、一過性のことではありません。
ミッションに独自性があれば、他社との差別化が図れます。
また明確であれば、社員は「自分が行うべきこと」や「方向性」が見つけやすくなります。
企業におけるビジョン(Vision)とは
企業におけるビジョン(Vision)とは、「企業の将来像」です。
「ミッションに沿った行動をし続けることで、どういった姿になりたいか」を明文化します。
またビジョンは「自分たちがどうなりたいか」だけでなく、「世の中にどのような貢献をしたいか」を加えることもポイント。
すると世間から応援されやすい企業になります。
さらに、必須ではありませんが「いつまで」という期限をつけると、より実現しやすいものとなります。
企業におけるバリュー(Value)とは
企業におけるバリュー(Value)とは、「社員が持つべき価値基準」です。
「ミッションとビジョンをかなえるために、どのような行動を取るべきか」にあたるもの。
仕事をするうえでの「行動指針」ともいえます。
そのためバリューは、ミッションやビジョンよりも具体的で、複数あることが多いです。
より詳しくミッション・ビジョン・バリューを理解する
前項でミッション・ビジョン・バリューの定義を確認しましたが、それだけではなかなか理解しづらいかと思います。
そこでより理解が深まるように、その背景や童話での例え話などをご紹介します。
ドラッカーが唱えたミッション・ビジョン・バリュー
ミッション・ビジョン・バリューについて調べると、ドラッカーを紹介していることがよくあります。
それはドラッカーが著書『ネクスト・ソサエティ(原題:Managing in the Next Society)』のなかで、その必要性を唱えたためです。
「マネジメントの父」として知られるピーター・ドラッカー。
ネクスト・ソサエティ、つまり「次の社会」は「知識社会となる」と著しました。
そして企業が存在意義を示すための方法として、ミッション・ビジョン・バリューを提唱しました。
童話「桃太郎」でミッション・ビジョン・バリューを考える
ミッション・ビジョン・バリューをよりわかりやすく理解するために、身近な物語にあてはめることも有効です。
有名な題材として、童話「桃太郎」がありますす。
桃太郎といえば「鬼退治」。
では桃太郎の「ミッション」は「鬼退治」でしょうか?
実はそうではありません。
「ミッション」は一過性のものではなく、永続的なもの。
「鬼退治」はあくまでも一過性のことです。
桃太郎のミッションは「村の平和を守ること」になります。
次に「ビジョン」は、「村の平和を守ること(ミッション)」に沿った行動を続けることで、かなえたい将来像です。
すると「鬼を退治して、村人が平和に暮らすこと」がビジョンといえます。
最後に「バリュー」。
ミッションとビジョンをかなえるために、大切にする価値観です。
桃太郎が鬼退治のために必要なのは、犬・猿・キジと力を合わせて戦うこと。
つまりバリューは「チームプレーを大切にすること」といえます。
このように分かりづらい事柄でも、身近なことにあてはめて考えると、理解がすすみますね。
コンセプトとの違い
コンセプトとは「概念」という意味ですが、経営においては「企業の特徴をわかりやすく表したフレーズ」となります。
ミッションと近いように思えますが、さらに具体化にしたものがコンセプトです。
後述する「作り方」でミッションができたら、社内外により浸透しやすいようにコンセプトを検討するのもいいですね。
個人もミッション・ビジョン・バリューを持つべき?
ミッション・ビジョン・バリューは、個人でも持つべきなのでしょうか?
筆者は、個人でも持つことをおすすめします。
それは「自分が大切にしていることが明確になる」ため。
生活するなかで、どちらに進むべきか迷うことが多くあります。
そんなときにミッション・ビジョン・バリューがあれば、どちらに進むことが自分らしいのかがわかります。
迷いがすべて消えるわけではないでしょうが、行動がブレることや選んでから後悔することは減るはずです。
ぜひ個人でも作ってみてください。
ミッション・ビジョン・バリューの作り方
ここまで読んで「自分の会社にもミッション・ビジョン・バリューを取り入れたい」と思われた方も多いのではないでしょうか。
そこで、ミッション・ビジョン・バリューの作り方をご紹介します。
ミッション・ビジョン・バリューを作る時期
ミッション・ビジョン・バリューを作る時期は、できれば「起業時」です。
起業時に企業の根幹をしっかり決めておくことで、スタート後にブレずに仕事を進めることができます。
企業にミッション・ビジョン・バリューがないと、すべての経営者・社員の行動指針がないため、仕事の方向性に一貫性がないことになります。
「起業時に作らなかった」という企業も、できるだけ早いうちに作っておくことをおすすめします。
ミッション・ビジョン・バリューを作る順番
ミッション・ビジョン・バリューを作る順番は、以下の通りとするのがスムーズでしょう。
- ビジョン
- ミッション
- バリュー
まずは、実現したい将来像(ビジョン)を決めます。
そしてそのために企業が行うべきこと(ミッション)は何かを考える。
最後に、ビジョンとミッションを実現させるために、全員が持つべき価値観(バリュー)を決めます。
ミッション・ビジョン・バリューの作り方
ミッション・ビジョン・バリューの作り方は次のとおりです。
①メンバーを決める
まずは、ミッション・ビジョン・バリューを決めるメンバーを選びます。
起業のメンバーが少ない場合には、メンバー全員で決めていきます。
企業がある程度大きい場合でも、できるだけ経営に関わるメンバー全員で決めることが重要です。
できるだけ多くの意見を取り入れることで、すべての経営者・社員が納得できるルールを作ることができます。
そしてメンバーに対しては、「ミッション・ビジョン・バリューとはどのようなもので、なぜ必要なのか」を説明し、あらかじめ理解してもらいましょう。
②意見をまとめる
選ばれたメンバーで、ミッション・ビジョン・バリューを決めます。
このとき思いつくままに候補を挙げてもらい、他人の意見を否定しないようにしてください。
まだ起業したばかりであれば「これからどのようなことを行いたいのか」、「なぜ起業したのか」、「大切にしたいことは何か」などの意見を挙げてもらいます。
すでに創業から数年経つ会社であれば「創業時にしたかったことは何か」、「これまでどのようなことを大切にしてきたのか」などを挙げていきます。
また一度だけで決めようとはせず、何度も話し合いをしてください。
根気強く話し合いを行い、全員が納得するものを作り上げましょう。
そして、自分たちだけで作り上げることができない場合は、コンサルティングなどによるワークショップを受けることも効果的です。
③社内外に周知する
最後に、決まったミッション・ビジョン・バリューを社内外に周知します。
決めた内容を社内に掲示することも大切ですが、使いこなすことでより浸透していきます。
そのために効果的なのは、人事評価制度などに組み込むこと。
すると社員は自然に自社のミッション・ビジョン・バリューを理解できます。
また企業のウェブサイトにも記載して、社外にもアピールしていきましょう。
そのミッション・ビジョン・バリューに共感した応募者を集められるなど、採用にも役立ちます。
人気企業におけるミッション・ビジョン・バリューの事例
記事の最後に、人気企業3社のミッション・ビジョン・バリューをご紹介します。ぜひ自社で策定する際の参考にしてください。
Googleの場合
検索エンジンサイトの運営から始まり、いまや世界最大規模の企業「GAFA」の一つであるGoogle。
そのミッション・バリューは次のような内容です。
Googleのミッション
Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです。
Google公式サイトより
Googleのバリュー
より多くの人々の、より良い毎日のために
Google公式サイトより
また、こちらのルールもGoogleのバリュー(価値観)といえます。
Google が掲げる 10 の事実
1.ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる
2.1 つのことをとことん極めてうまくやるのが一番
3.遅いより速いほうがいい
4.ウェブ上の民主主義は機能する
5.情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない
6.悪事を働かなくてもお金は稼げる
7.世の中にはまだまだ情報があふれている
8.情報のニーズはすべての国境を越える
9.スーツがなくても真剣に仕事はできる
10.「すばらしい」では足りない
Google公式サイトより
楽天グループの場合
日本最大のショッピングモール運営のほか、銀行や証券会社なども設立し、楽天モバイルが「第4のキャリア」になるなど挑戦を続ける楽天グループ。
そのミッション・ビジョン・バリューは次のとおりです。
楽天のミッション
イノベーションを通じて、 人々と社会をエンパワーメントする
常識にとらわれずアイデアを重んじイノベーションで世界を変える
楽天グループ公式サイトより
楽天のビジョン
グローバル イノベーション カンパニー
私たちは世界中の人々が夢を持って幸せに生きられる社会を創るために知力と創造力と想いを結集し、何事をも成し遂げていく企業文化のもと常識をくつがえすイノベーションを生み出し続けることを目指します
楽天グループ公式サイトより
楽天のバリュー
楽天主義
楽天グループのあり方を明確にすると同時に、全ての従業員が理解し実行する価値観・行動指針が「楽天主義」です。「ブランドコンセプト」「成功のコンセプト」の2つで構成されています。
楽天グループ公式サイトより
ソフトバンクグループの場合
3社目は、携帯電話事業やインターネット関連会社を傘下に置き、日経平均株価の構成銘柄の一つともなっているソフトバンクグループです。
ミッション・ビジョン・バリューは次のとおり。
ソフトバンクのミッション(経営理念)
情報革命で人々を幸せに
ソフトバンクグループ公式サイトより
ソフトバンクのビジョン
「世界の人々から最も必要とされる企業グループ」を目指して
ソフトバンクグループ公式サイトより
ソフトバンクのバリュー
努力って、楽しい。
「No.1」いちばんって、楽しい。
「挑戦」挑戦って、楽しい。
「逆算」逆算って、楽しい。
「スピード」大至急って、楽しい。
「執念」あきらめないって、楽しい。
ソフトバンクグループ公式サイトより
まとめ:ミッション・ビジョン・バリューを作って共有を
今回は、ミッション・ビジョン・バリューの定義、作り方、人気企業での事例をご紹介しました。
企業における必要性をご理解いただけたでしょうか。
ミッション・ビジョン・バリューを共有することはつまり、社員との価値観を共有することです。
まだ企業で持っていない経営者の方は、ぜひ記事内容を参考に作り上げてみてください。