【経営者向け】中小企業デジタル化応援隊事業とは?利用方法や事例も紹介【第Ⅱ期 新規登録申請開始】

新型コロナの影響でテレワークが進み、また「今後はDX(デジタルトランスフォーメーション)が経営に欠かせない」といわれるなど、企業のデジタル化が急速に進んでいます。

このような環境のなか、「デジタル化を進めたい中小企業」を応援するために設けられたのが「中小企業デジタル化応援隊事業」です。

この記事では経営者の方向けに、中小企業デジタル化応援隊事業の基本情報から利用方法、事例までご紹介していきます。

「テレワークを導入したいけれど、何から始めればいいのかわからない…」といった経営者の方は、ぜひご覧ください。

中小企業デジタル化応援隊事業とは?

中小企業デジタル化応援隊事業とは、「IT活用をしたいけれど、どこから手をつければよいのかわからない」という中小企業・小規模事業者に、フリーランスなどのIT専門家を「中小企業デジタル化応援隊」として選定・紹介するマッチング支援プログラム事業です。

またIT専門家には事務局(第Ⅱ期はアデコ)から「謝金(最大3,500円(税込)/時間)」が支払われるため、中小企業・小規模事業者は、通常よりもリーズナブルにアドバイスが受けられます

主管は、独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)。

2020(令和2)年に開始され、第Ⅰ期事業は以下の期間で行われました。

  • 第Ⅰ期事業 受付期間:2020年9月1日~2021年1月31日
    (支援事業実施期間:2020年9月1日〜2021年2月28日)

そして2021年5月24日からは、第Ⅱ期事業の新規登録受付が開始されています。

第Ⅱ期 中小企業デジタル化応援隊事業

中小企業デジタル化応援隊事業を利用する経営者のメリット

中小企業デジタル化応援隊事業を利用する経営者には、次のようなメリットがあります。

  • 導入したいデジタルツールの専門知識をもつ「IT専門家」を紹介してもらえる
  • 「謝金制度」により、通常よりもリーズナブルに支援を受けられる

第Ⅱ期 中小企業デジタル化応援隊事業の概要

次に、2021年5月24日から新規登録が開始された、第Ⅱ期 中小企業デジタル化応援隊事業の概要についてご紹介します。

第Ⅰ期 中小企業デジタル化応援隊事業との違い

2020年度に実施された第Ⅰ期 中小企業デジタル化応援隊事業と、2021年度の第Ⅱ期事業では、以下について違いがあります。

  • 事業実施期間
  • 登録できるIT専門家や中小企業等の範囲や基準
  • IT専門家が中小企業に対して行う支援におけるルール

第Ⅰ期事業を利用された経営者の方は、この記事や公式サイトで第Ⅱ期事業のルールをよくご確認ください。

また第Ⅰ期事業で登録済みの場合は、ログイン時に再度利用規約に同意することで、第Ⅱ期 事業も利用可能です。

ただし、事務局が補助する「謝金」は、第Ⅰ期と第Ⅱ期の通算での累積の合計が30万円(税込)までとなります。

[第Ⅱ期概要①]事業実施期間

第Ⅱ期事業の事業実施期間は、下表の通りです。

IT専門家・中小企業等の本事業への登録受付期限 2021年9月30日まで
IT専門家と中小企業等による支援計画の契約締結の期限 2021年11月30日まで
IT専門家による支援の完了及び支援実施報告の期限 2021年12月17日まで
IT専門家による謝金申請の期限 2021年12月24日まで
事務局事業の実施期限 2022年2月28日まで

この期限までに、専用システム「Meetup」で登録・契約締結・支援実施報告・謝金申請を完了する必要があります。

期限内に完了しない場合、謝金の支払い対象となりませんので、ご注意ください。

また、第Ⅱ期事業予算が上限に達する見込みがある場合は、上記の期限より前に登録受付・契約締結が締め切られる予定です。
利用を検討されている方は、早めに登録申請を行いましょう。

[第Ⅱ期概要②]「中小企業等」の対象範囲と基準

第Ⅱ期事業を利用できる「中小企業等」の対象範囲は、下表の中小企業と小規模事業者です。

出典:利用についての手引書

ただし、「みなし大企業」や「第Ⅰ期事業で登録取消処分を受けた中小企業等」は、登録できません。

また支援先対象となる「中小企業等」の基準は、次のとおりです。

  1. 日本国内で登記している
  2. 日本国内で納税している
  3. 訴訟や法令遵守上、補助事業の遂行に支障をきたす問題を抱えていない
  4. 役員が暴力団等の反社会的勢力でない
  5. 公序良俗に反する事業又は公的な資金の使途として社会通念上、不適切であると判断される事業を営むものでない
  6. 事務局が求める本事業に係る調査やアンケート等に協力する
  7. IT専門家リストや支援事例の公開に同意する
  8. 中小企業等経営強化法に定められた認定情報支援機関としての認定を受けた法人ではない
  9. 利用規約に同意する
  10. 支援後に中小企業等が回答するIT専門家についてのアンケート結果をシステム上で開示することに同意する
  11. 第Ⅰ期事業において、規約違反等の事実がない[第Ⅱ期概要③]対象となるデジタル化支援対象領域

第Ⅱ期事業の対象となるデジタル化支援領域は、下表の通りです。
ただし「この例示内容に限らず、広く対象する」と説明しています。

また「コンテンツ制作・デザイン作成等の請負契約」は、支援対象には含まれません。

出典:利用についての手引書

[第Ⅱ期概要④]支援方法

1つの支援において、依頼できるIT専門家は一人です。
ただし、中小企業が作成した1つの案件について、複数のIT専門家が作成した別々の支援計画を合意・契約締結することは可能となっています。

また同じ時刻に、複数の支援を利用することはできません。

[第Ⅱ期概要⑤]支援単価・謝金・

支援単価は、中小企業等とIT専門家が合意すれば、自由に設定可能です。
そして謝金となる3,500円(税込)を上回る分については、中小企業等が実費として支払います。

また中小企業等では、1時間あたり最低500円(税込)の実費負担が必要です。

例として、次のような支援単価の場合、謝金と実費負担は税込みで下表のようになります。

支援単価 謝金単価 実費負担
2,000円の場合 1,500円 500円
3,700円の場合 3,200円 500円
10,000円の場合 3,500円 6,500円

[第Ⅱ期概要⑥]IT専門家の範囲と基準

第Ⅱ期事業の対象になる「IT専門家」の範囲は、以下のどちらかの要件を満たす人です。

  1. 本事業への参加を希望する個人。本業・副業・兼業を問わないが、副業・兼業の場合は所属先から許可をもらっている
  2. 中小企業等経営強化法に定められた認定情報処理支援機関としての認定を受けた法人(SMEサポーター)に所属する者である

また「IT専門家」の基準として、下図の全ての項目を満たすことが必要です。

出典:利用についての手引書

第Ⅱ期 中小企業デジタル化応援隊事業の利用方法【経営者向け】

次は、第Ⅱ期 中小企業デジタル化応援隊事業の経営者向けの利用方法のご紹介です。
事業の流れは下図の通りですので、この図に沿って解説します。

出典:利用についての手引書

[利用方法①]中小企業登録を行う

まずは公式サイトの「中小企業登録申請」をクリックして中小企業登録フォームに入り、「中小企業登録」を行います。

第Ⅱ期 中小企業デジタル化応援隊事業:中小企業登録申請

登録時、すべての中小企業等で必要となるのは「担当者の顔写真データ」です。

また「法人格がない中小企業等」の場合は、以下の書類の写し(画像)が必要となります。

  1. 身分証明書(表)/(裏)
  2. 所得税納税証明書(その1またはその2)
  3. 所得税確定申告書B

登録後は、デジタル化応援隊事務局で申請内容を確認。

登録内容に問題がなければ、1~3営業日ほどで「中小企業登録完了と相談案件登録のお願い/直接提案依頼のお願い」メールが送信され、中小企業登録は完了です。

その後、マイページにログインが可能となります。

[利用方法②]直接提案依頼・相談案件の登録

①直接提案依頼の登録

中小企業等とIT専門家の間ですでに面識があり、依頼したい具体的な内容が決まっている場合には、「直接提案依頼」の登録を行います。

マイページで「IT専門家へ提案依頼登録」をクリックし、IT専門家のメールアドレスや依頼内容を入力。
「IT専門家へメール送信」をクリックすると、提案メールが送信されます。

そしてIT専門家が相談内容についての支援計画を作成し、中小企業等に提案します。

②相談案件の登録

中小企業等で依頼するIT専門家が決まっていない場合には、「相談案件」の登録を行い、事務局にてマッチングを実施します。

まずはマイページで、IT専門家に相談したい「デジタル化に関する内容」を入力。
登録方法と書き方は、公式サイトのガイドブックを参照してください。

第Ⅱ期 中⼩企業デジタル化応援隊 相談案件ガイドブック 〜登録⼿順編〜
第Ⅱ期 中⼩企業デジタル化応援隊 相談案件ガイドブック 〜書き⽅TIPS編〜

登録した相談案件については、相談内容が事業の主旨に合っているかどうかを、事務局が審査します。

審査に合格した相談案件は、IT専門家のマイページ画面で公開。

その後、支援を希望するIT専門家が支援計画を作成し、中小企業等に提案します。

[利用方法③]支援計画の協議・合意

IT専門家が提案した支援計画をマイページで確認し、IT専門家とメールやシステムの「メッセージ管理」を使って協議を行います。

なお、この時点(業務委託契約締結前)での活動については、事業における「謝金」は発生しません。

中小企業等が支援計画に合意すると、IT専門家と事務局に「中小企業等による合意」の通知メールが送信。
その後事務局が、支援計画について審査を行います。

[利用方法④]業務委託契約の締結

支援計画が事務局の審査でOKとなった場合、「事務局審査OKメール」が中小企業等とIT専門家に送信されます。

マイページで、中小企業等・IT専門家の両方が「契約締結する」ボタンをクリックした時点で「業務委託締結」となり、支援の実施が可能となります。

[利用方法⑤]支援の実施

支援計画に沿って、IT専門家が支援を実施します。
ステップごとの支援計画の場合には、そのステップごとにIT専門家が事務局への支援実施報告を行います。

支援を行っていくうえで、支援計画の内容に変更が必要となった場合は、すでに開始している支援案件をいったん終了。
そして別途、新規の支援計画を作成し、業務委託契約締結後に新規の支援を開始する流れになります。

[利用方法⑥]実費負担分の請求書確認・支払い

支援完了後、IT専門家が「支援実施報告」を作成し事務局に提出を行い、さらに下図のような請求書を発行。
中小企業等は、請求書の内容に問題がないか確認します。

出典:利用についての手引書

内容に問題がなければ実費負担分額を支払い、これで事業の一連の流れは終了となります。

  • 例)支援総額が20万円(税込)、謝金額が16万円(税込)の場合、
     →中小企業等の実費負担額4万円(税込)を、IT専門家に支払う

中小企業デジタル化応援隊事業の支援事例

記事の最後に、中小企業デジタル化応援隊事業の支援事例をご紹介します。

[支援事例①]精密金属加工メーカー

  • 所在地: 東京本社
  • 従業員数: 約30名

IT化が進むなか、これまでは自社で学び考え対応。
セキュリティ対策についても同様に、社内PCへのウイルス対策ソフト導入など、自社で対応してきました。

しかし「セキュリティ対策が本当に十分なのか?」という不安があったものの、「何から始めたらいいのかわからない」ために踏み込めていませんでした。

そこでデジタル化応援隊事業を利用し、セキュリティ強化のIT専門家に支援を依頼。

ヒアリングの結果、セキュリティのツールをいきなり導入するのではなく、現在実施しているセキュリティ対策状況の把握から始めることになりました。

出典:第Ⅱ期中小企業デジタル化応援隊事業 支援事例一覧

現在も支援中で、この支援により、セキュリティ強化のためのルール策定や社内の意識付けなど、社内のセキュリティ意識向上を目指します。

出典:第Ⅱ期中小企業デジタル化応援隊事業 支援事例一覧

今回の事例以外にも、下記の公式サイトではさまざまな業界での事例が紹介されています。

第Ⅱ期中小企業デジタル化応援隊事業 支援事例一覧

まとめ:中小企業デジタル化応援隊事業を利用してデジタル化の促進を

この記事では経営者の方向けに、中小企業デジタル化応援隊事業の基本情報から利用方法、事例までご紹介しました。

補助金制度のように申請に膨大な時間かかることもなく、登録のみで利用できる、企業にとって有益でメリットの多い制度です。

ぜひ第Ⅱ期 中小企業デジタル化応援隊事業を利用して、あなたの会社のデジタル化の促進に役立ててください。