人手不足に悩みながらも、「求人にあまりお金をかけられない」という企業は多いのではないでしょうか。
そんなとき助けになるのが、助成をうけながら試行期間を設けることで、社員の適正を見極められる「トライアル雇用助成金」制度です。
この記事では、「トライアル雇用助成金」の基本情報や全コースの助成金支給額、対象者、申請方法といった制度概要まで解説します。
「人手不足を解消したい」と考えている経営者の方は、ぜひご覧ください。
「トライアル雇用助成金」とは?
「トライアル雇用助成金」とは、さまざまな条件により安定的な就職が困難な求職者について、「トライアル雇用」として一定期間試行雇用した企業に対して助成金が支給される制度です。
試行期間に応募者の適性や業務遂行能力を見極めることができ、求人のミスマッチを防ぐことにつながります。
2021(令和3)年時点では、以下の6コースの「トライアル雇用助成金」が設けられています。
- 一般トライアルコース:離転職を繰り返すなどの就職困難者を対象としたもの
- 障害者トライアルコース:障害者を対象としたもの
- 障害者短時間トライアルコース:精神障害・発達障害者の短時間労働を対象としたもの
- 新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース:新型コロナウイルス感染症の影響による離職者を対象としたもの
- 新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース:新型コロナウイルス感染症の影響による離職者で、短時間労働希望者を対象としたもの
- 若年・女性建設労働者トライアルコース:若年者や女性を対象としたもの(中小建設業向け)
なお、「雇用維持の方策」に活用できる助成金制度としては「雇用調整助成金」や「産業雇用安定助成金」があり、こちらの記事でくわしくご紹介しています。
コロナで注目度アップ!雇用調整助成金の申請方法とは?
「産業雇用安定助成金」をわかりやすく解説!制度概要や出向事例も紹介します
「トライアル雇用」とは?
「トライアル雇用」とは、職業経験の不足などの原因で「就職が難しい」とされる求職者を、原則3か月「試行雇用」することで適性・能力を見極め、常用雇用への移行のきっかけとするための制度です。
わかりやすく図解すると下図のようになり、会社が求める基準を満たせば「トライアル雇用」後に常用雇用へと移行します。
また厚生労働省によれば、「トライアル雇用」後に約8割の人が常用雇用に移行しているとのことです(トライアル雇用リーフレットより)。
新型コロナによる休業の場合、トライアル雇用期間が変更可能に
新型コロナの影響で休業した場合、特例としてトライアル雇用期間が変更可能となりました。
この対象となるのは、次項からご紹介する6つのコースすべてです。
トライアル雇用期間中に新型コロナの影響で休業すると、下図のように休業中の勤務予定日を除き、終了予定日の翌日以降に追加できます。
ただし、期間を変更するには以下の要件を全てみたす必要があります。
- 令和2(2020)年4月1日~令和3(2021)年8月31日の間にトライアル雇用期間が含まれている
- 上記期間中に、新型コロナの影響で対象者を休業させた
- 休業により、対象者の適性の見極めが難しくなった
- トライアル雇用期間の変更について、労働者との合意がある
また、変更前後で「トライアル雇用期間中の合計勤務日数が同じ」であることや、「トライアル雇用実施計画書変更届(新型コロナ特例)」の提出も必要です。
「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」制度概要
ここからは、「トライアル雇用助成金」の各コースについて、制度概要をご紹介します。
まずは「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」です。
[一般トライアルコース1]助成金の支給額
「一般トライアルコース」での助成金の支給額は次のとおり。
- 対象者1人当たり、月額最大4万円(最長3か月間)
(対象者が母子家庭の母、または父子家庭の父の場合は月額5万円)
[一般トライアルコース2]対象者
「一般トライアルコース」の対象となるのは、次のいずれかの要件をみたし、ハローワークや職業紹介事業者などによる職業紹介の日(紹介日)に「トライアル雇用」を希望した人です。
- 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
- 紹介日の前日時点で、離職している期間が1年を超えている
- 妊娠、出産・育児を理由に離職し、紹介日の前日時点で、安定した職業に就いていない期間が1年を超えている
- 55歳未満で、ハローワークなどで担当者制による個別支援を受けている
- 就職の援助を行うに当たって、特別な配慮を要する(生活保護、母子家庭の母、父子家庭の父、日雇労働者など)
ただし、紹介日の時点で、次の人は対象となりません。
- 安定した職業に就いている人
- 自ら事業を営んでいる人または役員に就いている人で、1週間当たりの実働時間が30時間以上の人
- 学校に在籍中で卒業していない人
- 他の事業所でトライアル雇用期間中の人
なお、支給対象事業者としての要件もありますので、くわしくは下記の資料をよくご確認ください。
・トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)のご案内
・各雇用関係助成金に共通の要件等
[一般トライアルコース3]申請方法
事業者はまず、事前に「一般トライアル雇用求人」をハローワークや地方運輸局、職業紹介事業者に提出して、これらの紹介で前項の対象者を雇い入れます。
次にトライアル雇用開始日から2週間以内に、紹介したハローワークに「実施計画書」を提出。
このとき、雇用契約書など「労働条件が確認できる書類」を添付してください。
そして、トライアル雇用終了日の翌日から2ヶ月以内に、ハローワークまたは労働局に「支給申請書」を提出します。
2ヶ月を過ぎると助成金を受給できなくなりますので、注意が必要です。
「トライアル雇用助成金(障害者(短時間)トライアルコース)」制度概要
次に、「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)」と「トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)」の制度概要をご紹介します。
なお「障害者短時間トライアルコース」とは、次のような内容で、トライアル雇用期間は最大12ヶ月です。
- 週10~20時間未満の短時間の試行雇用から開始し、体調や適応状況に応じて、トライアル雇用期間中に20時間以上の就労を目指す
[障害者トライアルコース1]助成金の支給額
「障害者トライアルコース」での助成金の支給額は次のようになります。
- 対象者1人当たり、月額最大4万円(最長3ヶ月間)
- 精神障害者を雇用する場合は月額最大8万円(最大8万円✕3ヶ月、その後4万円✕3ヶ月)
また、精神障害者は原則6~12ヶ月間のトライアル雇用期間を設けることができますが、助成金の支給対象期間は6ヶ月までです。
次に「障害者短時間トライアルコース」での助成金の支給額は、下記のとおり。
- 対象者1人当たり、月額最大4万円(最長12ヶ月間)
[障害者トライアルコース2]対象者
「障害者トライアルコース」の対象となるのは、「障害者の雇用の促進等に関する法律 第2条第1号」に定める障害者に該当する人で、障害の原因や障害の種類は問いません。
さらに以下のいずれかの要件をみたし、障害者トライアル雇用を希望した人が対象となります。
- 紹介日時点で、就労経験のない職業に就くことを希望している
- 紹介日の前日から過去2年以内に、2回以上離職や転職を繰り返している
- 紹介日の前日時点で、離職している期間が2か月を超えている
- 重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者
次に「障害者短時間トライアルコース」の対象となるのは、下記のどちらかに該当する人です。
- ア.精神障害者
- イ.発達障害者
[障害者トライアルコース3]申請方法
事業者はまず、事前に「障害者(短時間)トライアル雇用の求人」をハローワークや地方運輸局、職業紹介事業者に提出して、これらの紹介で前項の対象者を雇い入れます。
次にトライアル雇用開始日から2週間以内に、紹介したハローワークに「実施計画書」を提出。
このとき、雇用契約書など「労働条件が確認できる書類」を添付してください。
そして、トライアル雇用終了日の翌日から2ヶ月以内に、ハローワークまたは労働局に「支給申請書」を提出します。
2ヶ月を過ぎると助成金を受給できなくなりますので、注意が必要です。
[障害者トライアルコース4]テレワークの場合はトライアル雇用期間を6ヶ月まで延長可能に
障害者のテレワーク推進のため、2021年4月1日から、テレワークによる勤務を行う場合にはトライアル雇用期間を6ヶ月まで延長可能となりました。
ただし「精神障害者」については、従来でも最大12ヶ月まで延長可能なため、テレワークによる延長の対象外です。
なお「テレワークによる勤務」とは、対象労働者の1週間の所定労働時間の1 / 2以上で「情報通信技術を活用して勤務する」ことをいいます。
「トライアル雇用助成金(新型コロナウイルス感染症対応(短時間)トライアルコース)」制度概要
次に、「トライアル雇用助成金(新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース)」と「トライアル雇用助成金(新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース)」の制度概要をご紹介します。
なお「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース」とは、新型コロナの影響で離職し、「これまで経験のない職業に就くこと」を希望している求職者を対象とする制度。
「新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース」は、さらに「短時間労働」での勤務を希望する人が対象の制度です。
[新型コロナ対応トライアルコース1]助成金の支給額
「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース」での助成金の支給額は、次のとおりです。
- 対象者1人当たり、月額最大4万円(最長3ヶ月間)
次に「新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース」の支給額は、下記のようになります。
- 対象者1人当たり、月額最大2.5万円(最長3ヶ月間)
[新型コロナ対応トライアルコース2]対象者
「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース」の対象となるのは、次の要件を全てみたし、ハローワークや職業紹介事業者などによる職業紹介の日(紹介日)に「トライアル雇用」を希望した人です。
- 2020年1月24日以降に、新型コロナの影響で離職した
- 紹介日時点で、離職している期間が3ヶ月を超えている
- 紹介日において、「就労経験のない職業」に就くことを希望している
次に「新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース」の対象となるのは、次の要件をどちらもみたし、紹介日に「トライアル雇用を希望」した人です。
- 短時間(1週間の所定労働時間が20時間~30時間未満)の無期雇用による雇い入れを希望している
- 上記①~③を全てみたしている
[新型コロナ対応トライアルコース3]申請方法
事業者はまず、事前に「新型コロナウイルス(短時間)感染症対応トライアル雇用求人」をハローワークや地方運輸局、職業紹介事業者に提出して、これらの紹介で前項の対象者を雇い入れます。
次にトライアル雇用開始日から2週間以内に、紹介したハローワークに「実施計画書」を提出。
このとき、雇用契約書など「労働条件が確認できる書類」を添付してください。
そして、トライアル雇用終了日の翌日から2ヶ月以内に、ハローワークまたは労働局に「支給申請書」を提出します。
2ヶ月を過ぎると助成金を受給できなくなりますので、注意が必要です。
「トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)」制度概要
記事の最後に、「トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)」の制度概要をご紹介します。
このコースの支給要件は他コースと少し違っており、以下の4コースの支給が決定されていることが条件となります。
- 一般トライアルコース
- 障害者トライアルコース
- 新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース
- 新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース
なお「障害者短時間トライアルコース」の支給対象者は、このコースでは対象外となります。
[若年・女性建設労働者トライアルコース1]助成金の支給額
「若年・女性建設労働者トライアルコース」の助成金支給額は次のとおりです。
- 建設労働者1人当たり、月額最大4万円(最長3か月間)
[若年・女性建設労働者トライアルコース2]対象者
「若年・女性建設労働者トライアルコース」の対象となるのは、上述の4コースの支給対象となった労働者のうち、次のどちらにも該当する人です。
- トライアル雇用の開始日時点で35歳未満の者、または女性
- トライアル雇用期間に主として建設工事現場での現場作業(左官、大工、鉄筋工、配管工など)または施工管理に従事する
また助成金を受給できるのは、次の全てに該当する事業者となります。
- 「建設の事業」としての雇用保険料率の適用がされている事業主
- 「雇用管理責任者」を選任している事業主
- 中小建設事業主
[若年・女性建設労働者トライアルコース3]申請方法
「若年・女性建設労働者トライアルコース」の申請方法は、上述の4コースの申請を通常通り行なって「支給申請書」を提出する際に、「若年・女性建設労働者トライアルコース」の「支給申請書」も一緒に提出するというものです。
たとえば、「一般トライアルコース(「一般」とします)」と「若年・女性建設労働者トライアルコース(「若年」とします)」に申請する場合は、次のようになります。
- 「一般」のトライアル雇用を開始する
- 2週間以内に、紹介したハローワークに「一般」の「実施計画書」を提出する
- 「一般」のトライアル雇用が終了する
- 2ヶ月以内にハローワークまたは労働局に、「一般」の「支給申請書」と、同時に「若年」の「支給申請書」を提出する
まとめ:トライアル雇用助成金を有効活用し人材の確保を
この記事では、「トライアル雇用助成金」の基本情報や全コースの助成金支給額、対象者、申請方法といった制度概要まで解説しました。
ぜひ記事を参考に、「トライアル雇用助成金」を有効活用し、人材の確保を進めていきましょう。
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