【最大8,000万円を助成!】TOKYO戦略的イノベーション促進事業を解説します

最大8,000万円の助成金が支給される、東京都の「TOKYO戦略的イノベーション促進事業」
助成金支給のほか、連携コーディネータによる支援を受けることもでき、都内で事業を行っている事業者の方には魅力的な事業です。

この記事では、「TOKYO戦略的イノベーション促進事業」の基本情報や制度概要、申請方法を解説していきます。

「新製品の開発を考えている」という東京都内の経営者の方はぜひご覧頂き、促進事業への申請をご検討ください。

TOKYO戦略的イノベーション促進事業の基本情報

まずは、TOKYO戦略的イノベーション促進事業の基本情報をご紹介します。

TOKYO戦略的イノベーション促進事業とは?その特徴

TOKYO戦略的イノベーション促進事業とは、「イノベーションマップ」の開発テーマに沿って、中⼩企業が⼤学等との連携で実施する技術・製品開発などに要する経費の一部を助成しハンズオン支援を行う、東京都の助成金制度です。

令和3年度(2021年度)に開始された新規事業。

事業の実施主体は、東京都の中小企業支援機関である(公財)東京都中小企業振興公社です。

(参考)
東京都中小企業振興公社:令和3年度 TOKYO戦略的イノベーション促進事業

TOKYO戦略的イノベーション促進事業の特徴

TOKYO戦略的イノベーション促進事業の制度の特徴は次のようになっています。

特徴①:大型の製品開発をサポート

最長3年間の開発にかかった経費の2 / 3が、最大8,000万円を限度に助成されます。

また、開発段階を区分して「期」ごとに進捗を確認し、助成金を一部支払うことも可能。

一般的な助成事業は事業完了後に助成金が交付されますが、TOKYO戦略的イノベーション促進事業では、助成対象期間を複数の「期」に分けることで、期ごとに助成金が交付されます。

特徴②:幅広い経費が対象

原材料費、機械装置費、委託・外注費、直接人件費など「開発に係わる経費」から、展示会等参加費や広告費などの「マーケティングに係る費用」まで対象とされています。

特徴③:助成事業実施中のハンズオン支援

製品開発や事業化支援等の経験を持つ連携コーディネータが、技術開発や知的財産権の取得、販路開拓などを伴走型で支援してくれます。

特徴④:事業完了後のアフターフォロー(最大1年間)

事業化の進捗状況に応じて、マーケティングや販路開拓などの継続支援が受けられます。

特徴⑤:環境変化への柔軟な対応

技術・製品開発を巡る環境の変化に対応するため、開発計画を柔軟に変更できる仕組みとなっています。

東京都の「イノベーションマップ」とは?

「イノベーションマップ」とは、次の3つのシティを実現するうえで東京が持つ課題を解決するため、成長産業分野での開発支援テーマと技術・製品開発動向などを示した技術開発指針です。

  1. スマートシティ
  2. セーフシティ
  3. ダイバーシティ

なお「イノベーションマップ」は、東京都によって毎年度策定されます。

(参考)
東京都産業労働局:令和3年度イノベーションマップ
東京都産業労働局:TOKYO戦略的イノベーション促進事業

TOKYO戦略的イノベーション促進事業の予算額

TOKYO戦略的イノベーション促進事業の予算額は、428,000,000円です。

また東京都では、TOKYO戦略的イノベーション促進事業の採択数を12件と想定しています。

(参考)
東京都財務局:令和3年度主要事業

TOKYO戦略的イノベーション促進事業の制度概要

次に、TOKYO戦略的イノベーション促進事業の制度概要をご紹介します。

[制度概要①]助成内容と助成額・助成率

TOKYO戦略的イノベーション促進事業に採択された事業者への助成内容は、次の2点です。

  1. 技術・製品開発に要する経費の一部を助成する
  2. 連携コーディネータによるハンズオン支援を行う

事業の助成額と助成率は以下のとおり。

  • 助成率:2 / 3
  • 助成限度額:8,000万円 (下限額1,500万円)

なお助成率とは、助成対象経費のうち助成金として交付される金額の割合を指します。
助成限度額とは、助成金として交付される最大額です。

また、連携コーディネータによるハンズオン支援は、各事業を効果的かつ的確に支援するため、事業化に向けた次のような内容で行われます。

  • ア 事業の進捗状況に合わせた経営・技術支援、知的財産支援、販路開拓支援 など
  • イ 事業の必要性に応じた既存施策の紹介やアドバイス、専門アドバイザーの派遣 など
  • ウ 事業完了後、事業化の進捗度合いに応じて、最長1年間ア、イのハンズオン支援を継続

連携コーディネータは、採択後に公社から派遣されます。

[制度概要②]助成事業の要件

促進事業に申請するためは、次の5つの要件をすべて満たす必要があります。

要件①:イノベーションマップに掲げられた開発支援テーマに合致した技術・製品の研究開発である

「開発支援テーマ」は、以下の9点です。

  1. 防災・減災・災害復旧
  2. インフラメンテナンス
  3. 安全・安心の確保
  4. スポーツ振興・障害者スポーツ
  5. 子育て・高齢者・障害者等の支援
  6. 医療・健康
  7. 環境・エネルギー
  8. 国際的な観光・金融都市の実現
  9. 交通・物流・サプライチェーン

各テーマの「技術・製品開発の例示」は、イノベーションマップ資料でご確認ください。
東京都産業労働局:TOKYO戦略的イノベーション促進事業

 

要件②:他企業・大学・公設試験研究機関等との連携が含まれている

出典:東京都中小企業振興公社

連携は共同研究だけではなく、委託や外注作業でも可能です。
また、連携先は大企業でも問題ありません。

自社単独(社内のみ)での開発は、助成の対象となりませんのでご注意ください。

要件③:早期に事業化を目指す研究開発である

「事業化」とは、販売などによって”収入が発生すること”をいいます。

ただし、次のようなケースは対象外です。

  • 研究開発の主要な部分が申請者による開発でないもの
  • 研究開発が特定の顧客を対象とした汎用性のないもの

 

要件④:開発に関する情報を公社に開示できる

要件⑤:申請者と公社の窓口として、事業全体の進捗管理や必要書類の管理等を全面的に担当する「統括管理者」を1名設置する

中小企業グループによる共同申請の場合は、代表企業で管理者を設置する必要があります。

 

[制度概要③]事業者の要件

促進事業に申請する事業者は、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。

申請要件①:次のア~エのいずれかに該当する

  • ア 中小企業者 (会社および個人事業者)
  • イ 中小企業団体等
  • ウ 複数の企業等で構成される中小企業グループ(共同申請)
  • エ 東京都内での創業を具体的に計画している者

申請要件②:組織形態が次のア~ウのいずれかに該当し、それぞれ(ア)・(イ)の条件を満たすもの

ア 法人の場合
 (ア) 基準日現在で、東京都内に登記簿上の本店または支店がある
 (イ) 基準日現在で、東京都内事業所で実質的に1年以上事業を行っている、または東京都内で創業し、引き続く事業期間が1年に満たない者

イ 個人事業者の場合
 (ア) 基準日現在で、東京都内に開業届出があること
 (イ) 基準日現在で、東京都内事業所で実質的に1年以上事業を行っている、または東京都内で創業し、引き続く事業期間が1年に満たない者

ウ 創業予定者の場合
 (ア) 基準日現在で、東京都内での創業を具体的に計画している者
 (イ) 交付決定後速やかに登記簿謄本または都内税務署に提出した個人事業の開業届出の写し(税務署受付印のあるもの)を提出できる

申請要件③:助成事業の実施場所は、次のア~ウのすべてに該当している。前項②-ウの者は、該当する場所を有する予定である

  • ア 自社の事業所又は工場等である(借り上げ可)
  • イ 原則として東京都内である(埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県でも可)
  • ウ 申請書記載の原材料等購入物品、開発人員および当該助成事業における成果物などが確認できる

申請要件④:次の項目すべてに該当する

  • ア 同一テーマ・内容で、公社・国・都道府県・区市町村等から助成を受けていない
  • イ 本助成事業の同一年度の申請は、一企業につき一申請とする。また、同一テーマ・内容で、公社が実施する他の助成事業に併願申請していない など

項目の詳細は、募集要項をご確認ください。
東京都中小企業振興公社:募集要項

[制度概要④]助成対象経費

助成対象となるのは、「技術・製品開発に要する経費」です。
具体的には、以下の①~④の条件に適合し、「助成対象経費一覧」に掲げる経費となります。

対象経費①:助成対象事業として決定を受けた事業を実施するための必要最小限の経費

たとえば、試作品などの研究開発数量は「目標を達成できる必要最小限の数量」とします。

対象経費②:助成対象期間内に契約、取得、支払いが完了した経費

支払いは原則として、金融機関による申請者名義(法人は法人名義)の口座からの振込払いです。

対象経費③:助成対象の使途、単価、規模等が確認可能であり、かつ、本助成事業に係るものとして、明確に区分できるもの

 

対象経費④:財産取得となる場合は所有権(ソフトウェアの場合は著作権)が助成事業者に帰属する

助成対象経費一覧

経費区分 内容
原材料・副資材費 開発品の構成部分、研究開発等の実施に直接使用し消費される原料、材料及び副資材の購入に要する経費
(例:鋼材、機械部品、電気部品、化学薬品、試験用部品 など)
機械装置・工具器具費 当該研究開発の実施に直接使用する機械装置・工具器具等の購入、リース、レンタル、据付費用に要する経費
(例:試作品を製作するための試作金型、計測機械、測定装置、サーバ、ソフトウェア など)
委託・外注費 (1)委託(例:開発、試験 など)
(2)外注(例:製造・改造・加工、試料の製造・分析鑑定 など)
(3)共同研究(例:大学、試験研究機関等との間で共通の課題について分担して行う研究開発 など)
(4)試作品等運搬委託費
(5)ユーザーテスト費用
専門家指導費 外部(専門家)から技術指導を受けたり、外部(専門家)に技術に関する相談を行ったりする場合に要する経費
(例:謝金・相談料 など)
直接人件費 (1)研究開発に直接従事した主な社員の人件費
(2)統括管理者の人件費(例:本助成事業実施に係る提出用経理書類の資料の取りまとめ など)
規格等認証・登録費 (1)開発品の規格適合、認証の審査・登録に要する経費(例:認証・検査機関への申請手数料 など)
(2)開発品の規格等認証・登録に係る外部専門家の技術指導、研修等を受ける場合に要する経費(例:技術文書・マニュアル整備等の指導及び作成代行 など)
(3)薬事承認申請に必要な臨床・非臨床の試験に係る経費
産業財産権出願・導入費 (1)開発した製品の特許・実用新案等に関する調査、出願、審査請求に要する経費
(2)特許・実用新案等を他の事業者から譲渡または実施許諾を受けた場合の経費
展示会等参加費 (1)出展小間料(例:展示会・見本市に係る出展小間料 など)
(2)資材費(例:小間内の装飾費、出展に必要な資材費 など)
(3)輸送費(例:展示品や展示用資材、配布するパンフレット等の運搬委託費 など)
広告費 (1)広告物の製作に要する経費(パンフレット、PR映像)
(2)広告の掲載に要する経費(新聞・雑誌・Web)

 

なお、規格等認証・登録費、産業財産権出願・導入費、展示会等参加費、広告費の助成金交付申請額の合計は、全体の1 / 2が上限です。

助成対象とならない経費

次の経費は、助成対象とはなりません

  • ア 設備の整備・改修に係る経費
  • イ 管理・運営に係る経費
  • ウ 間接経費(消費税、振込手数料、通信費、光熱費 など)
  • エ 資料収集業務、調査業務、会議費、消耗品費、旅費交通費などの事務的経費

また以下のケースでは、助成対象経費であっても助成金が支払われません。

  • 契約から支払までの一連の手続きが助成対象期間内に行われていない経費
  • 発注通りに納品されたことが確認できない経費
  • 公社指定の帳票類が不備の経費 など

[制度概要⑤]審査方法

促進事業の審査は次のように行われ、助成対象者が決定されます。

  • 一次審査(書類審査):申請書類に基づき実施
  • 現地調査
  • 二次審査(面接審査)
  • 総合審査会

また審査で確認する点は以下のとおり。

  • 経理審査(財務内容、事業予算、資金確保状況など)
  • 技術審査
    ・イノベーションマップとの適合性
    ・新規性(従来技術にない新しい開発要素など)
    ・優秀性(従来技術に対する優位性など)
    ・市場性(市場動向、ニーズの把握、販売見込みなど)
    ・実現性(技術的能力、社内外体制など)
    ・計画の妥当性(事業計画や資金計画の適切性など)

[制度概要⑥]スケジュール

促進事業のスケジュールは下図のとおりです。

出典:東京都中小企業振興公社

2021年度の採択結果(助成対象者)は、2022年3月に決定する予定。

採択後は、公社担当者による説明会を受けて補助事業を開始します。

なお、採択された事業者が、契約から支払いまでの一連の手続きを行う「助成対象期間」は、以下の期間です。

  • 令和4年(2022年)1月1日~令和6年(2024年)12月31日(最長3年)

設定された事業期間が、1年6か月を超える場合には、「中間報告(遂行状況報告書の提出)」を実施。

事業完了後には「実績報告書」を提出し、公社による完了検査を受け、問題がなければ助成金の額が確定して、事業者の指定する口座へ振り込まれます。

 

TOKYO戦略的イノベーション促進事業の申請方法

記事の最後に、TOKYO戦略的イノベーション促進事業の申請方法をご紹介します。

申請書類

TOKYO戦略的イノベーション促進事業の申請時に提出する書類は、以下のとおりです。

  1. 申請書(実施計画、資金計画等)【指定様式】
  2. 補足説明資料【様式自由:A4用紙を使用し、30枚以内であること】
  3. 特許・実用新案等の証拠書類(特許証、特許公報類)の写し
  4. 見積書の写し
  5. 申請前確認書【指定様式】
  6. 申請に係る誓約書【指定様式】
  7. 事業成果の広報活動について【指定様式】
  8. 確定申告書の写し
  9. 代表者の直近の源泉徴収票の原本
  10. 資金繰り表
  11. 助成事業を遂行できる資金保有の裏付け書類
  12. 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)原本
  13. 開業届の写し
  14. 法人事業税及び法人都民税の納税証明書の原本(都税事務所発行)
  15. 代表者の所得税納税証明書その1の原本(税務署発行)
  16. 代表者の住民税の納税証明書の原本(区市町村発行)
  17. 社歴(経歴)書(会社案内・概要でも可、個人・創業の場合は代表者の経歴書)
  18. 長形3号の封筒(審査結果通知等の郵送用)

ただし、申請者の組織形態によって「必要となる書類」が異なりますので、くわしくは資料でご確認ください。
東京都中小企業振興公社:申請に必要な提出資料一覧【PDF】
東京都中小企業振興公社:申請書のダウンロードはこちら【Excel】

申請方法

促進事業の申請書を提出するには、まずは申請予約を行うことが必要です(申請予約期間:2021年7月7日~8月6日)。

その後、申請書類を作成し、予約した日時に郵送にて書類を提出します。

簡易書留などの記録の残る方法で送付し、宛先は(公財)東京都中小企業振興公社です。

まとめ:TOKYO戦略的イノベーション促進事業の活用を

この記事では、TOKYO戦略的イノベーション促進事業の基本情報や制度概要、申請方法を解説してきました。

2021年度の申請は終了しましたが、2022年度も実施される可能性は高いです。
ぜひ記事を参考に制度の概要を把握して、TOKYO戦略的イノベーション促進事業を活用しましょう。

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