60歳以上の社員を雇用している企業で、ぜひ活用していただきたいのが「エイジフレンドリー補助金」です。
しかし令和2(2020)年度に新設されたばかりで、一般的な知名度も低く、「制度の内容まではわからない」という方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、「エイジフレンドリー補助金」の基本情報や制度概要、補助対象・対象外事例までご紹介していきます。
「高年齢労働者のために、職場環境を改善したい」と考えている経営者の方は、ぜひご覧ください。
エイジフレンドリー補助金とは?
エイジフレンドリー補助金とは、「⾼齢者が安⼼して安全に働くこと」を目的とし、中小企業事業者が職場環境の改善に要した費用の一部を補助する補助金制度です。
令和2(2020)年度に新設されました。
事務局には昨年と同様で「一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会」が選任され、事務センターが立ち上げられています。
また厚生労働省では、補助金制度と同時に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」も公表。
これは、働く高齢者(60歳以上)が過去10年で1.5倍と増加し、さらに労働災害のうち1/4以上を占めるという現状を改善すべく策定されたものです。
労働災害が続けば、人手不足を招くおそれもあります。
ぜひエイジフレンドリー補助金を活用し、安全な職場をつくっていきましょう。
ちなみに、「エイジフレンドリー」とは「高齢者の特性を考慮した」を意味し、WHOや海外の労働安全衛生機関で使用される言葉です。
(参考)
・厚生労働省:「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)を公表します
エイジフレンドリー補助金の採択率:不明
エイジフレンドリー補助金の採択率は、令和2(2020)年度の結果(申請数・採択数)が公表されていないため不明です。
ただし補助金制度の予算額(案)が、今回は下記のように大幅にアップしています。
- 前回(令和2年度):2億5,121万1千円(うち補助金額は1億5千万円)
- 今回(令和3年度):6億2,307万3千円(うち補助金額は4億5千万円)
そのため、前回よりも採択者数が大幅に増加することは間違いありません。
令和3(2021)年度エイジフレンドリー補助金の制度概要
次に、令和3(2021)年度エイジフレンドリー補助金の制度概要をご紹介します。
[制度概要1]対象となる事業者
令和3(2021)年度エイジフレンドリー補助金の支給対象となるのは、次の①~③のすべてを満たす事業者です。
① 高年齢労働者(60歳以上)を、常時1名以上雇用している
②下表のいずれかに該当する事業者である(労働者数または資本金等のどちらかを満たせば該当)
業種 | 業種の詳細 | 常時使用する労働者数 | 資本金または出資の総額 |
---|---|---|---|
小売業 | 小売業、飲食店、持ち帰り配達飲食サービス業 | 50人以下 | 5,000万円以下 |
サービス業 | 医療・福祉、宿泊業、娯楽業、教育・学習支援業、情報サービス業、物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業など | 100人以下 | 5,000万円以下 |
卸売業 | 卸売業 | 100人以下 | 1億円以下 |
その他の業種 | 製造業、建設業、運輸業、農業、林業、漁業、金融業、保険業など | 300人以下 | 3億円以下 |
③労働保険に加入している
[制度概要2]補助金額と補助率
令和3(2021)年度の補助金額と補助率は下記のとおり。
- 補助金額:最大100万円(消費税を含む)
- 補助率:1 / 2
[制度概要3]補助対象となる経費
補助対象となるのは、⾼年齢労働者のための「職場環境改善」に要した経費です。
また「職場環境改善」には、次のような対策が該当します。
- 働く⾼齢者の新型コロナウイルス感染予防
- ⾝体機能の低下を補う設備・装置の導⼊
- 健康や体⼒状況等の把握
- 安全衛⽣教育の実施
具体的な事例は後述しています。
[制度概要4]申請から交付までの流れ
申請から交付までの流れは、次のようになります。
交付までの流れ | 実施者 |
---|---|
①補助金交付申請 | 申請者 |
②審査等 | 事務局 |
③交付決定通知の発行 | 事務局 |
④対策の実施・費用の支払い | 申請者 |
⑤実績報告書・精算払請求書 | 申請者 |
⑥確認、補助金の交付 | 事務局 |
①補助金交付申請(申請者)
申請に必要な書類は次のとおり。
(①~④はひとつのワード形式データにまとまっています)
提出資料にモレがないよう「令和3年度エイジフレンドリー間接補助金の申請に必要な提出資料一覧表」で確認したうえで提出しましょう。
また申請は、郵送でのみ行なえます。
すべての書類を揃えたところで、下記へ郵送してください。
送付先:〒105-0014 東京都港区芝1-4-10 トイヤビル5階 |
②審査等(事務局)
送付された申請書は毎月末に取りまとめ、翌月に事務局(労働安全衛⽣コンサルタント会)で審査が行われます。
この審査結果で、補助金の交付・不採択が決定。
また申請内容の確認のために、事務局が実地調査を⾏うことがあります
③交付決定通知の発行(事務局)
審査の結果、交付が決定された場合は、申請者に交付決定通知が送付されます。
不採択の場合にはメールで通知。
一部の補助金制度のように、申請者数や交付決定者数などは公表されません。
④対策の実施・費用の支払い(申請者)
交付決定通知を受領してから、物品の購⼊や⼯事の発注施⼯などを行ない、支払いまで済ませます。
一部の補助金制度のように「事前着手制度」が認められていないため、交付決定前に実施しないよう注意してください。
ただし、令和4(2022)年2月14日までに次項の報告書を提出しなければならないため、できるだけ速やかに行ないましょう。
⑤実績報告書・精算払請求書(申請者)
対策の⽀払⽇からできるだけ3ヶ⽉以内に、最終的には令和4(2022)年2月14日までに、実施報告書と精算払請求書を作成し事務局に提出します。
⑥確認、補助金の交付(事務局)
実施報告書と精算払請求書を事務局が確認のうえ、問題がなければ確定通知書等を送付し、補助⾦を振り込みます。
[制度概要5]令和3(2021)年度の申請受付期間
令和3(2021)年度の申請受付期間は、下記のとおりです。
- 期間:令和3(2021)年6月11日~10月31日
ただし、「交付決定額が予算額に達した場合は、申請期間中であっても受付を締め切る」とされているため、早めの申請がおすすめ。
ちなみに昨年の令和2(2020)年度は、申請期間が10月末から11月13日まで延長されました。
[制度概要6]交付は1事業者あたり年度で1回まで、ただし不採択なら再度申請可能
エイジフレンドリー補助金の交付は、1事業者あたり年度で1回までとなります。
そのため、いくつかの改善に取り組もうと考えている場合は、その都度ではなくまとめて申請しましょう。
ただし、審査の結果、採択されなかった事業者は、同一年度のその後の公募期間でも再度申請が行えます。
万が一、不採択となったときのことを考え、やはり早めに申請することがおすすめです。
エイジフレンドリー補助金の補助対象・対象外事例
記事の最後に、エイジフレンドリー補助金の補助対象と対象外の事例をそれぞれご紹介します。
対象事例1:働く⾼齢者の新型コロナウイルス感染予防
「働く⾼齢者の新型コロナウイルス感染予防」で補助金の対象になるものとして、次のような事例が挙げられています。
- 介護における移乗介助の際の⾝体的負担を軽減する機器
- 介護における⼊浴介助の際の⾝体的負担を軽減する機器
- 熱中症の初期症状等の体調の急変を把握できる⼩型携帯機器 ( ウェアラブルデバイス ) による健康管理システムの利⽤
- ⾶沫感染を防⽌するための対策
また、「換気の不足を補うための空気清浄機」を導入するケースでは、以下の要件をすべて満たす場合のみ補助対象です。
- 空気清浄機が HEPA フィルタによるろ過式で、かつ、風量が5㎥/min 程度以上のもの
- 人の居場所から 10 ㎡(6畳)程度の範囲内に空気清浄機を設置すること
- 空気のよどみを発生させないように、外気を取り入れる風向きと空気清浄機の風向きを一致させること
対象事例2:⾝体機能の低下を補う設備・装置の導⼊
「⾝体機能の低下を補う設備・装置の導⼊」で補助金の対象になるものとして、次のような事例が挙げられています。
- 通路の段差の解消(スロープの設置等)、階段に⼿すりの設置
- 床や通路の滑り防⽌対策(防滑素材の採⽤、防滑靴の⽀給)
- 危険箇所への安全標識や警告灯等の設置
- 業務⽤の⾞両への⾃動ブレーキ⼜は踏み間違い防⽌装置の導⼊
- 熱中症リスクの⾼い作業がある事業場における休憩施設の整備、送⾵機の設置
- 体温を下げるための機能のある服
- 不⾃然な作業姿勢を改善するための作業台等の設置
- 重量物搬送機器・リフト
- トラック荷台等の昇降設備
- 重筋作業を補助するパワーアシストスーツ
上記「トラック荷台等の昇降設備」としては、昇降のためのリヤステップ、サイドステップ、手すりなどがありますが、これらは「高年齢労働者の安全衛生確保に寄与するもの」と認められるため補助対象です。
しかし「テールゲートリフターやフォークリフト」は、後述のように対象外とされています。
対象事例3:健康や体⼒の状況の把握等
「健康や体⼒の状況の把握等」で補助金の対象になるものとして、次のような事例が挙げられています。
- 安全で健康に働くための体⼒チェックの実施
- 運動・栄養・保健指導等の実施(健康診断、⻭科検診の費⽤を除く)
- 保健師やトレーナー等の指導による⾝体機能の維持向上活動
ただし体力チェックなどを実施する際、補助対象となるのは「雇用する高年齢労働者の人数分」のみです。
対象事例4:安全衛⽣教育
「安全衛⽣教育」で補助金の対象になるものとして、次のような事例が挙げられています。
- ⾼齢者の特性を踏まえた安全衛⽣教育
- 加齢による労働災害リスクの増大の理解促進のための教育
なお、高年齢労働者の活躍促進のための安全衛生対策の「好事例」については、下記のページを参考にご覧ください。
(参考)
・厚生労働省:先進企業の取組事例集
・厚生労働省:高年齢労働者に配慮した職場改善事例(製造業)
・独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構:高齢者雇用の支援 事例・調査研究
補助金の対象外となる事例
下記のケースはエイジフレンドリー補助金の対象外となるため、申請しても採択されません。
〈対象外①〉建設現場等の休憩室
一定規模以上の建設工事では、現場事務所や休憩室などが工事費用にふくまれており、補助金の観点では「常設の休憩室」を前提としているため対象とはなりません。
〈対象外②〉事務室には高齢者がいるが、改善を行うのは高齢者がいない工場内の場合
補助対象となる作業に高年齢労働者が従事しないため、補助対象外です。
〈対象外③〉トラックに装備するテールゲートリフター・フォークリフト
トラックに装備するテールゲートリフター・フォークリフトは「業務効率化・生産性向上」のウエイトが高いため、対象とはなりません。
〈対象外④〉着替え用の予備
対象は「高年齢労働者の人数分」が限度。
たとえ対象となる「空調服」であっても、その「着替え用の予備」は対象外となり、自社で準備しなくてはなりません。
〈対象外⑤〉介護施設における電動ベッド
電動ベッドは「介助者の腰痛防止効果はある」としながら、主目的が「被介助者側の負担軽減、介護サービス向上のため」と考えられるため対象外です。
具体的には、電動昇降機能、電動背起こし機能つきベッド、褥瘡防止ベッド、マットやベッド付属の見守り装置、体重測定装置などが対象外とされています。
〈対象外⑥〉交付決定前に発注・購入した物品や工事費用
前述のとおり「対策の実施・費用の支払い」は、「交付決定通知を受領」してから行わなくてはなりません。
交付決定前に発注・購入してしまった物品や工事の費用については、補助対象外となります。
まとめ:エイジフレンドリー補助金で高齢者にも快適な職場を
この記事では、「エイジフレンドリー補助金」の基本情報や制度概要、補助対象・対象外事例までご紹介してきました。
ぜひ記事を参考に、「エイジフレンドリー補助金」を活用し、高齢者にも快適な職場をつくっていきましょう。
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ご関心のある方は、ぜひ下記サイトもご覧ください。