2021年2月15日、経済産業省ウェブサイトなどで資料「事業再構築補助金の概要」が公表されました。
「事業再構築補助金」は補助額が最大1億円、予算総額が1兆円以上の大型補助金制度。
ですが新規事業のため、制度のくわしい情報がこれまでほとんど公表されていませんでした。
今回資料が公開されたことで、「制度の申請条件」や「公募に向けて準備すべきこと」などが、より詳しくわかるようになっています。
そこでこの記事では、資料「事業再構築補助金の概要」で新たに判明した点について、わかりやすく解説します。
「事業再構築補助金」への申請を検討されている経営者の方は、ぜひご覧ください。
【2/15発表】資料「事業再構築補助金の概要」とは
「事業再構築補助金の概要」とは、2020年2月15日に経済産業省ウェブサイトとミラサポPlusで公表された、「事業再構築補助金」に関する新たな資料です。
こちらで実際の資料を確認できます。
「事業再構築補助金」は、補助金額が最大1億円の大型補助金制度ということで注目されていますが、これまで公開された資料は以下のリーフレット程度でした。
それが今回、18ページの資料が新しく公表されたことで、「申請要件」や「現段階で準備可能な事項」などがわかり、2021年3月に予定されている公募開始に向けて準備することが可能となりました。
資料「事業再構築補助金の概要」によって新たに判明した点については、次項からご説明していきます。
なお、制度全体の概要を知りたい方は、先に以下の記事をお読みください。
【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説
【Q&A】最大1億円の「事業再構築補助金」について疑問に答えます
「事業再構築補助金の概要」で新たに判明した点①:申請条件について
ここからは資料「事業再構築補助金の概要」で新たに判明した点を解説していきます。
まずは事業再構築補助金の「申請できる条件」について新たに判明した点をご紹介します。
中堅企業の定義が明確に(ただし「調整中」)
事業再構築補助金では「中小企業」と「中堅企業」が対象ですが、「中堅企業」の定義は出されていませんでした。
今回はじめて「中堅企業」の定義が、以下のように明確になりました。
- 中堅企業の範囲:中小企業の範囲に入らない会社のうち、資本金10億円未満の会社(調整中)
ただし現時点ではまだ定義が「調整中」とのことで、今後変更されることもありますので注意が必要です。
また「中小企業」の範囲は中小企業基本法と同様で、以下のように定義されています。
- 製造業その他:資本金3億円以下の会社 または従業員数300人以下の会社および個人
- 卸売業:資本金1億円以下の会社 または従業員数100人以下の会社および個人
- 小売業:資本金5千万円以下の会社 または従業員数50人以下の会社および個人
- サービス業:資本金5千万円以下の会社 または従業員数100人以下の会社および個人
さらに「中小企業等」には「小規模事業者」や「個人事業主」も含まれ、補助金事業の対象となります(「よくある質問」より)。
対象経費は基本的に設備投資で、「主要経費」と「関連経費」に分かれる
事業再構築補助金は「基本的に設備投資を支援するもの」と明記されました。
また「補助対象経費、対象外経費の例」として、次の項目が挙げられています。
補助対象経費の例
【主要経費】
●建物費(建物の建築・改修に要する経費)、建物撤去費、設備費、システム購入費
【関連経費】
●外注費(製品開発に要する加工、設計等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費)
●研修費(教育訓練費等)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
●リース費、クラウドサービス費、専門家経費
【注】 「関連経費」には上限が設けられる予定です補助対象外の経費の例
事業再構築補助金の概要より
●補助対象企業の従業員の人件費、従業員の旅費
●不動産、株式、公道を走る車両、汎用品(パソコン、スマートフォン、家具等)の購入費
●販売する商品の原材料費、消耗品費、光熱水費、通信費
なお自動車などの車両購入費は補助対象外ですが、「キッチンカーに載せる設備」は補助の対象になり得ます。
そして、事業計画策定のためのコンサルタント料など「補助金への応募申請時の事業計画書等の作成に要する経費」は、補助対象外となる予定です。
「事業再構築補助金の概要」で新たに判明した点②:事業計画について
ここでは、事業再構築補助金の「事業計画」について新たに判明した点を解説します。
事業計画の重要性が明確に
事業計画について次の点が明記され、その重要性がより明確になりました。
- 補助金の審査は事業計画をもとに行われる
- 補助金で採択されるために、合理的で説得力のある事業計画を策定することが必要
- 事業計画は認定経営革新等支援機関と相談しつつ策定すること
事業計画に記載すべきポイントと「審査項目」
「事業計画に含めるべきポイントの例」として、以下が挙げられています。
●現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性
事業再構築補助金の概要より
●事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)
●事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法
●実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)
また、次の点が「審査項目」となる可能性があるとされています。
- 事業化に向けた計画の妥当性
- 再構築の必要性
- 地域経済への貢献
- イノベーションの促進 など
なお審査は、外部有識者によって行われます。
応募申請された事業計画の内容を審査することで、採択する事業が決まります。
質の高い事業計画には、申請支援機関のサポートが欠かせません。
どの機関に頼むべきか検討されている方は、以下の経営者コネクトの申請支援サービスもご覧ください。
補助金額3,000万円超は金融機関との事業計画策定が必要
申請要件「事業計画を認定経営革新等支援機関と策定する」は以前から公表されていましたが、新たに「補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関(銀行、信金、ファンド等)も参加して策定する」ことが判明しました。
金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみでよいとのこと。
また事業再構築補助金において、「認定経営革新等支援機関」への報酬を必須とする要件は設けられていません。
報酬については「事業者ごとに、それぞれご利用頂く機関とご相談ください」と説明されています(「よくある質問」より)。
【2/15発表】資料「事業再構築補助金の概要」とは
次に「制度概要」についてわかった点です。
公募は1回ではなく複数回実施
補助金の公募は「1回ではなく、令和3年度にも複数回実施する予定」と判明しました。
また「よくあるお問い合わせ」によれば、「第1回目の公募に関しては、1か月程度の公募期間を想定している」とのこと。
さらに「事務局募集要領」では、「採択件数は 55,000件程度」ということがわかっています。
予算が1兆1485億円ある補助金制度の実施概要が、徐々に明らかになってきました。
緊急事態宣言の影響による通常枠への加点措置
前述のリーフレットでも「緊急事態宣言特別枠」は公表されていましたが、新たに「緊急事態宣言の影響による通常枠への加点措置」が判明しました。
対象となるのは以下の事業者で、通常枠での審査において「一定の加点措置」が行われます。
- 通常枠の申請要件を満たし、かつ緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、令和3年1~3月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少している事業者
なお上記の対象者向けに創設されたのが「緊急事態宣言特別枠」で、「通常枠」よりも補助率が引き上げられています。
また「緊急事態宣言特別枠」で不採択になった場合でも「加点のうえ、通常枠で再審査する」ことも新たに明記されました。
つまり「緊急事態宣言特別枠」に応募すると、通常枠で応募した方にくらべて「採択率が高くなる可能性が高い」といえます。
ただし同じ特別枠でも、「卒業枠」または「グローバルV字回復枠」で不採択となった場合は、通常枠で審査して採択されることはないため注意してください(「よくある質問」より)。
5年間のフォローアップ期間と補助金の返還
「補助事業期間(設備の購入を行う期間)終了後、5年間は事業計画についてフォローアップする」と明記されました。
この期間は、経営状況などについて年次報告を行うことが必要です。
また補助金で購入した設備は、今後公表される「補助金交付要綱」などに従い厳格に管理することとなります。
さらに「事業終了後のフォローアップ項目の例」として次の2点が挙げられ、このなかで「補助金の返還」の存在が判明しました。
①事業者の経営状況、再構築事業の事業化状況の確認
「中堅企業への成長」が要件となる「卒業枠」において、事業計画期間終了後に正当な理由なく中堅企業へ成長できなかった場合、補助金の一部返還を求められる予定です。
同様に、「付加価値額の増加」が要件となる「グローバルV字回復枠」で正当な理由なく付加価値目標が未達の場合も、補助金の一部返還を求められる予定とされています。
②補助金を活用して購入した資産の管理状況の確認、会計検査への対応
不正や不当な行為があった場合は、補助金返還の事由となります。
また不正があった場合、法令に基づく罰則が適用される可能性もあります。
交付決定前に購入契約を行う「事前着手承認制度」
購入契約の締結など「補助事業への着手」は、原則として「補助金の交付決定後」に行います。
ですが事業再構築補助金では「事前着手承認制度」が設けられることが判明しました。
これにより、公募開始後に「事前着手申請」を提出して承認されれば、「2月15日以降に行う設備の購入契約なども補助対象」となります。
ただし、設備の購入には「入札・相見積」が必要。
また補助事業に着手しても、補助金申請が「不採択」となるリスクがあるため、注意しなくてはなりません。
なお補助金の支払いは、補助事業実施期間終了後、事業者による支出経費の証憑を確認した後に行われます。
このとき、一定の条件のもとで「概算払制度」が設けられる予定です。
公募開始に向けて現段階で準備可能な事項3点
「公募開始は2021年3月の予定で、電子申請のため『GビズIDプライムアカウント』が必要」といった情報は公表されていましたが、「申請を考えている事業者が現段階で準備可能な事項」として、次の項目が具体的に明記されました。
- 電子申請の準備:「GビズIDプライムアカウント」の発行には2~3週間要するため、事前にIDを取得しておく
- 事業計画の策定準備:現在の企業の強み弱み分析や新しい事業の市場分析、優位性の確保に向けた課題設定及び解決方法、実施体制、資金計画などを検討しておく
- 認定経営革新等支援機関との相談:「認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する」ことが要件のため、必要ならば早めに相談しておく
ちなみに「認定経営革新等支援機関」とは「専門的知識を有し、一定の実務経験を持つ税理士・公認会計士・弁護士といった個人・法人・中小企業支援機関等で、国によって認定された機関」です。
「経営革新等支援機関」の支援を受けることで、補助金や税制優遇などの申請が行えます。
支援機関はこちらのサイトで探すことが可能です。
「事業再構築補助金の概要」で新たに判明した点④:事業再構築の事例紹介
「事業再構築の事例」として業種ごとに、より具体的な活用例と補助経費の例が明記されました。
これによって「事業再構築とはどのようなものか?」が理解しやすくなりました。
上図のほかに、次のような事例が紹介されています。
- 小売業での活用例(業態転換)
- サービス業での活用例(新分野展開)
- 製造業での活用例(新分野展開)
- その他の活用イメージ
まとめ:「事業再構築補助金の概要」で申請の準備を
この記事では資料「事業再構築補助金の概要」で新たに判明した点について、わかりやすく解説しました。
事業再構築補助金への申請を検討されている経営者の方は、ぜひ記事を参考に申請の準備を行ってみてください。