【事業再構築補助金】「事業再構築の類型」5つの違いを一覧表で解説!事例もご紹介

2021年7月2日に第二次締め切りを控える「事業再構築補助金」。
しかし指針で定義された「事業再構築の類型」は、ただ読むだけでは大変わかりにくい内容です。

そこでこの記事では、「事業再構築の類型」5つの違いを一覧表で解説します。

後半では事例もご紹介しますので、事業再構築補助金の申請を検討されている方は、ぜひご覧ください。

事業再構築補助金の「事業再構築指針」とは?

事業再構築指針」とは、事業再構築補助金における支援対象を明確化するために「事業再構築の定義等」を明らかにしたものです。
2021年3月17日に「事業再構築指針の手引き」とともに、中小企業庁から公表されました。

そして事業再構築補助金の「主要申請要件」は次の3点(事業再構築補助金の概要より)。

  1. 売上が減っている
  2. 事業再構築に取り組む
  3. 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する

上記2ではさらに「事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行う」と明記しており、「指針」が申請に必須の事項を記載した「重要な文書」であることがわかります。

なお、事業再構築の制度の全体像について知りたい方は、以下の記事もお読みください。

【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説

【Q&A】最大1億円の「事業再構築補助金」について疑問に答えます

「事業再構築の類型」5つの違い

次に、「事業再構築の類型」5つの違いを一覧表で解説します。

「事業再構築」と5つの類型

事業再構築補助金における「事業再構築」とは、次の5つの類型を指します。

  1. 新分野展開:新たな製品等で新たな市場に進出する
  2. 事業転換:主な「事業」を転換する
  3. 業種転換:主な「業種」を転換する
  4. 業態転換:製造方法等を転換する
  5. 事業再編:事業再編を通じて新分野展開、事業転換、 業種転換または業態転換のいずれかを行う

そして事業再構築補助金に申請するためには、「上記いずれかの類型に該当する事業計画を、認定支援機関と策定する」ことが必要です。

「事業再構築の類型」5つの違い一覧表

「事業再構築の類型」5つの違いがわかるように、各要件等の必要性を基準に一覧表にまとめました。

  1.業種・事業の変更 2.製品等の新規性要件 3.市場等の新規性要件 4.製造方法等の新規性要件 5.設備撤去等またはデジタル活用要件 6.売上高10%要件 7.売上高構成比要件 8.組織再編要件 9.その他の事業再構築要件
①新分野展開 必要 必要 必要  
②事業転換 主たる事業を変更 必要 必要 必要
③業種転換 主たる業種を変更 必要 必要 必要
④業態転換 必要
(製造業のみ)
必要 必要
(製造業以外のみ)
必要
⑤事業再編 必要 必要

「①新分野展開・②事業転換・③業種転換」は要件が似ていますが、大きな違いは「主たる事業や業種の変更があるかどうか」です。

「④業態転換」は、事業主の業種が「製造業」か「製造業以外」で要件が異なります。

そして表の「※」は、「⑤事業再編」において「①新分野展開~④業態転換」のいずれかを行うことが必要であることを表しています。

各要件等の定義

前項の一覧表で使用した、各要件等の定義は以下の通りです。

1.業種・事業の変更

事業主の「主たる業種・事業」を変更する必要があるかを表します。

「業種・事業」の定義は次のとおり。

  • 業種:直近決算期における売上高構成比率の最も高い事業が属する、総務省が定める日本標準産業分類に基づく大分類の産業
  • 事業:直近決算期における売上高構成比率の最も高い事業が属する、総務省が定める日本標準産業分類に基づく中分類小分類または細分類の産業
出典:中小企業庁

2.製品等の新規性要件

「製品等の新規性要件」を満たすためには、次の4つの全てを満たす必要があります。

  1. 過去に製造等した実績がない
  2. 製造等に用いる主要な設備を変更する
  3. 競合他社の多くが既に製造等している製品等ではない
  4. 定量的に性能又は効能が異なる

また、ここでいう「新規性」とは、「事業再構築に取り組む事業者にとっての新規性」であり、「日本初」や「世界初」といった「世の中における新規性」ではありません。

3.市場等の新規性要件

「市場の新規性要件」を満たすためには、「既存製品等と新製品等の代替性が低いこと」が必要です。

また、任意要件の「既存製品等と新製品等の顧客層が異なること」を事業計画で示すことで、審査で高い評価を受けることができる場合があります。

4.製造方法等の新規性要件

「製造方法等の新規性」を満たすためには、次の4つの全てを満たす必要があります。

  1. 過去に同じ方法で製造等していた実績がない
  2. 主要な設備を変更する
  3. 競合他社の多くが既に製品等を製造等するのに用いている製造方法等ではない
  4. 定量的に性能または効能が異なる

5.設備撤去等またはデジタル活用要件

「設備撤去等またはデジタル活用要件」を満たすためには、「既存の設備の撤去や既存の店舗の縮小等を伴うものまたは非対面化、無人化・省人化、自動化、最適化等に資するデジタル技術の活用を伴うもの」であることが必要です。

ただし、これは「④業態転換」のなかでも「製造業以外(提供方法の変更の場合)」のみ。
「製造業(製造方法の変更の場合)」では、上記「2.製品等の新規性要件」が必要です。

6.売上高10%要件

「売上高10%要件」を満たすためには、「3~5年間の事業計画期間終了後に、売上高が総売上高の10%以上を占める事業計画を策定」することが必要です。

ここで「売上高」の定義は、類型によって次のように異なります。

  • ①新分野展開:新製品の売上高
  • ④業態転換:新製品等の製造方法等による売上高

また「10%以上」とは、補助金申請を行うための最低条件。
この値が大きくなるほど、審査でより高い評価を受けることができる場合があります。

7.売上高構成比要件

「売上高構成比要件」を満たすためには、「3~5年間の事業計画期間終了後に、新製品の属する『事業・業種』が、売上高構成比の最も高い『事業・業種』となる事業計画を策定」することが必要です。

なお『事業・業種』については、②事業転換の場合は「事業」、③業種転換の場合は「業種」が入ります。

8.組織再編要件

「組織再編要件」を満たすためには、会社法上の組織再編行為である「合併、会社分割、株式交換、株式移転または事業譲渡」を行うことが必要です。

9.その他の事業再構築要件

「その他の事業再構築要件」を満たすためには、「⑤事業再編」以外の「①新分野展開・②事業転換・③業種転換・④業態転換」のいずれかの要件を満たすことが必要です。

「事業再構築の類型」事例紹介

記事の最後に、事業再構築の「⑤事業再編」以外の4類型について事例をご紹介します。

①新分野展開の事例紹介

航空機用部品を製造していた製造業者が、業界全体が業績不振で厳しい環境下の中、新たに医療機器部品の製造に着手し、5年間の事業計画期間終了時点で、医療機器部品の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定している場合

出典:事業再構築指針の手引き

事例がもし次の内容だった場合は、各要件を満たさず、本類型に該当しません。

  • 医療機器部品を以前も製造していた場合:製品等の新規性要件未達
  • 医療機器部品の売上高が総売上高の5%の場合:売上高10%要件未達

②事業転換の事例紹介

日本料理店が、換気の徹底によりコロナの感染リスクが低いとされ、足元業績が好調な焼肉店を新たに開業し、3年間の事業計画期間終了時点において、焼肉事業の売上高構成比が、標準産業分類の細分類ベースで最も高い事業となる計画を策定している場合

出典:事業再構築指針の手引き

事例がもし次の内容だった場合は、各要件等を満たさず、本類型に該当しません。

  • 調味料製造業に進出した場合:「業種」を変更しているため「業種転換」に該当
  • 焼肉店の価格帯やメニューが日本料理店と同一だった場合:市場の新規性要件未達

③業種転換の事例紹介

レンタカー事業を営んでいる事業者が、新たにファミリー向けのコロナ対策に配慮した貸切ペンションを経営し、レンタカー事業と組み合わせた宿泊プランを提供することで、3年間の事業計画期間終了時点において、貸切ペンション経営を含む業種の売上高構成比が最も高くなる計画を策定している場合。

出典:事業再構築指針の手引き

事例がもし次の内容だった場合は、各要件等を満たさず、本類型に該当しません。

  • 新たに不動産管理業を行う場合:「事業」の変更に留まっているため「事業転換」に該当
  • レンタカー事業者の多くが貸切ペンション経営を行っている場合:製品等の新規性要件未達

④業態転換の事例紹介

ヨガ教室を経営していたところ、コロナの影響で顧客が激減し、売上げが低迷していることを受け、サービスの提供方法を変更すべく、店舗での営業を縮小し、オンライン専用のヨガ教室を新たに開始し、オンライン専用のヨガ教室の売上高が、3年間の事業計画期間終了後、総売上高の10%以上を占める計画を策定している場合

出典:事業再構築指針の手引き

事例がもし次の内容だった場合は、各要件を満たさず、本類型に該当しません。

  • 既存の配信機材を使用する場合:製造方法等の新規性要件未達
  • 店舗を縮小せず、既存設備も撤去しない場合:設備撤去等又はデジタル活用要件未達

まとめ:「事業再構築の類型」5つの違いを理解して申請準備を

この記事では、「事業再構築の類型5つの違い」を一覧表で解説し、後半では事例もご紹介してきました。

「事業再構築の類型」に該当しなければ、申請要件がないため、補助金に採択されません。
類型の5つの違いをよく理解して、申請準備を進めましょう。

また、事業再構築補助金では、認定支援機関によるサポートを受けて応募する必要があります。

経営者コネクトでも、認定支援機関による申請サポートを行っています。
無料相談も行っていますので、ご関心ある方は以下のページもご覧ください。