2021(令和3)年5月12日に、令和3年度当初予算の公募が開始された「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」。
名称が似ていますが「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」とは別事業で、「2者以上が連携して申請する」ことが特徴の補助金制度です。
この記事では、「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」の基本情報と、令和3年度公募の概要を解説します。
「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」への申請を検討されている経営者の方は、ぜひご覧ください。
ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金とは?
「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」とは、「中小企業などが連携して取り組む、生産性向上を推進する取組等に係る経費」の一部を支援する補助金制度です。
平成31年度に新規事業として開始されました。
「2者~10者の複数(「連携体」とよびます)での応募」が必須で、「1者のみでの応募はできない」ことが特徴。
開始当初から「事業の目的」として次のことが挙げられています。
- 「コネクテッド・インダストリーズ」の取組を、日本経済の足腰を支える中小企業・小規模事業者等に広く普及させる
ちなみに「コネクテッド・インダストリーズの取組」とは、「人、モノ、技術、組織等がデータを介してつながることにより、新たな価値創出を図る取組」のことです。
一般的にいわれる「ものづくり補助金」とは別事業
一般的に「ものづくり補助金」とよばれるのは「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」となります。
今回ご紹介する「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」と「ものづくり補助金」とは別事業ですので、混同しないようご注意ください。
「ものづくり補助金」については、こちらの記事でくわしくご紹介しています。
【ものづくり補助金まとめ】制度概要や申請方法、採択結果などわかりやすく解説【2021年度版】
ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金の採択率と予算額
「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」の応募件数・採択件数・採択率は下表の通りです。
実施年度 | 応募件数 | 採択件数 | 採択率 |
---|---|---|---|
平成31年度 | 139件 | 96件 | 69% |
平成31年度 二次公募 | 40件 | 27件 | 68% |
令和2年度 | 74件 | 29件 | 39% |
合計 | 253件 | 152件 | 60% |
- 平成31年度「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」採択案件一覧
- 平成31年度「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」(2次公募)採択案件一覧
- 令和2年度 ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金 1次公募採択案件一覧
合計での採択率は60%と高いものの、応募件数が他の補助金制度とくらべ少なめ。
ちなみに「ものづくり補助金」では2020年度発表分(1次~3次)で約15,000件の応募がありましたので、応募数の違いがよくわかります。
また予算額は、平成31年度は約50.0億円でしたが、令和2年度は10.1億円と大幅に減額。
令和3年度は21.5億円と大幅増加の予算要求を行いましたが、結果的に前年度とほぼ同額の約10.4億円となっています。
令和3年度ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金の公募概要
次に、「令和3年度ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」の公募概要をご紹介します。
[令和3年度公募概要①]スケジュールと流れ
「令和3年度ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」のスケジュールは、次のとおりです。
- 公募期間:2021年5月12日~2021年7月7日 17時
- 採択結果の公表時期:不明
- 補助事業期間:交付決定日~2022年2月15日
また事業の流れは下図の通りで、一般的な補助金制度と同様です。
補助金支払いは、原則として事業終了後の精算払となるため、補助事業期間中は補助金相当分の資金を確保しておく必要があります。
[令和3年度公募概要②]補助対象事業者
補助の対象となる事業者は、日本国内に本社および補助事業の実施場所を有する「中小企業・小規模事業者等」および「特定非営利活動法人」です。
「中小企業・小規模事業者等」とは、資本金または従業員が下表1の数字以下となる会社または個人、もしくは下表2にある組合等を指します。
また「特定非営利活動法人」とは、以下をすべて満たす者をいいます。
- 広く中小企業・小規模事業者等一般の振興・発展に直結し得る活動を行う特定非営利活動法人である
- 従業員数が300人以下である
- 法人税法上の収益事業を行う特定非営利活動法人である
- 認定特定非営利活動法人ではない
- 交付決定時までに、補助金の事業に係る「経営力向上計画」の認定を受けている
採択された連携体の参加事業者が、交付決定前に「補助対象外事業者である」と発覚した場合は、連携体の事業全体が採択取消、交付決定後に発覚した場合は中止もしくは廃止となります。
[令和3年度公募概要③]事業類型
令和3年度公募には、次の2つの事業類型があります。
採択後に事業類型の変更はできないため、申請前によく検討しましょう。
〈類型①〉企業間連携型
企業間連携型では、複数の中小企業・小規模事業者等が連携して行う以下のプロジェクトを、最大2年間支援します。
- 事業者間でデータ・情報を共有し、連携体全体として新たな付加価値の創造や生産性の向上を図るプロジェクト
- 地域未来投資促進法に基づく地域経済牽引事業計画の承認を受けて、連携して新しい事業を行い、地域経済への波及効果をもたらすプロジェクト
連携体は中小企業・小規模事業者等2~5者により構成します。
〈類型②〉サプライチェーン効率化型
サプライチェーン効率化型では、大企業を含む幹事企業・団体等が主導し、中小企業・小規模事業者等が共通システムを全面的に導入し「データ共有・活用によってサプライチェーン全体を効率化する取組等」を支援します。
連携体は中小企業・小規模事業者等2~10者により構成します。
[令和3年度公募概要④]補助金額・補助率
令和3年度公募の補助金額・補助率は、次の通りです。
事業類型 | 補助金額 | 補助率 |
---|---|---|
企業間連携型 | 100万円~2,000万円/者 | 中小企業者1/2以内 小規模企業者・小規模事業者2/3以内 |
サプライチェーン効率化型 | 100万円~1,000万円/者 | 中小企業者1/2以内 小規模企業者・小規模事業者2/3以内 |
補助金応募申請額が100万円に満たない案件や、補助上限額(2,000万円または1,000万円)を超える案件は、審査の対象外となります。
[令和3年度公募概要⑤]補助要件
公募に申請できるのは、以下3点の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定し、賃金引き上げ計画を従業員に表明している企業です。
- 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加 (被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
- 事業計画期間において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
- 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%増加
また、連携体内に「特定非営利活動法人」が含まれる場合は、上記に加えて次の要件をどちらも満たすことが必要です。
- 連携体の半数以上が中小企業・小規模事業者等によって構成され、全体の補助金総額の2 / 3以上は中小企業・小規模事業者等に充てる
- 「特定非営利活動法人」に対する補助金額が、連携体を構成する法人の中の最高額とならない
[令和3年度公募概要⑥]補助対象経費
補助対象となるのは、事業対象として明確に区分でき、経費の必要性・金額の妥当性を証拠書類で明確に確認できる、以下の経費です。
- 機械装置・システム構築費
- 技術導入費(※1)
- 専門家経費(※2)
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
- 外注費(※2)
- 知的財産権等関連経費(※1)
※1:上限額 = 補助対象経費総額( 税抜き)の1 / 3
※2:上限額 = 補助対象経費総額( 税抜き)の1 / 2
なお、「単価50万円(税抜き)以上の設備投資」も申請要件となります。
「設備投資」とは、補助事業のために使用される「機械・装置」、「工具・器具」および「専用ソフトウェア」を取得すること。
連携体に参加する事業者それぞれが「設備投資」をする必要があります。
また「機械装置・システム構築費」以外の経費は、総額で500万円(税抜き)までが補助上限額です。
導入する設備については、所有権が明確である場合に限り共同利用は可能ですが、所有権が明確であっても共同購入は認められません。
[令和3年度公募概要⑦]応募申請方法
令和3年度公募の応募申請方法は「電子申請での受付」のみとなっており、「jGrants」で行います。
・jGrants:令和3年度ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金
・令和3年度 ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金 電子申請マニュアル
そして「jGrants」での申請にはGビズIDの取得が必要です。
申請に使用できるGビズIDアカウントは「プライム」と「メンバー」。
「エントリー」では申請できません。
GビズIDの概要や申請方法については、こちらの記事でくわしく説明しています。
GビズIDの「gBizIDプライム」とは?必須の補助金や登録申請方法を紹介
[令和3年度公募概要⑧]審査項目と加点項目
提出した事業計画は、外部有識者からなる審査委員会が審査を行い、より優れた事業計画が採択されます。
その審査を行う基準となるのが、以下の「審査項目」と「加点項目」です。
審査項目
令和3年度公募の審査項目は、次のようになります。
- 補助対象事業としての適格性:
「補助対象事業の要件」を満たすか - 技術面:
導入する設備・システム等が連携体の課題解決や業務の効率化につながり、生産性の向上や付加価値の増加を実現するものとなっているか など - 事業化面:
事業実施のための体制や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込まれるか など - 政策面:
地域の特性を生かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより地域の経済成長を力強く牽引する事業を積極的に展開することが期待できるか
加点項目
必須ではないものの、提出すれば審査で加点対象となる「加点項目」は、下記の通りです。
- 成長性加点:
有効な期間の「経営革新計画」の承認を、応募申請時に受けているか - 政策加点:
②-1:公募期間最終日時点で、地域未来牽引企業に選定されており、かつ地域未来引企業としての「目標」を経済産業省に提出しているか
②-2:自社として策定した「パートナーシップ構築宣言」の写しの提出があり、「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにおいて宣言を公表している企業であるか
②-3:より多くの事業者が参画する連携体を構成してプロジェクトに取り組む事業であるか - 災害等加点:
有効な期間の「事業継続力強化計画」の認定を、応募申請時に受けているか - 賃上げ加点等:
④-1:事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者
または、事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者
④-2:被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合
ただし加点されるのは、申請時にエビデンスとなる添付書類を提出し、各要件に合致した場合のみとなります。
[令和3年度公募概要⑨]採択予定数
補助事業者募集要領によれば、採択予定数は下記の通りで「30件程度」とされています。
- 本業務においては、全体で30件程度(ただし、1件当たりの補助申請額によっては、予定件数は増減する場合があります。)の中小企業・小規模事業者等に対して補助金を交付する事務等を行う
なお、令和3年度公募への申請を行う際は、こちらの公式サイトで公募要領や交付規程(案)などをよくご確認ください。
・NTTデータ:経済産業省「令和3年度ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」公募開始のお知らせ
まとめ:ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金申請の検討を
この記事では、「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」の基本情報と、令和3年度公募の制度概要を解説しました。
「2者以上が連携する」というハードルはあるものの、補助金額上限が2,000万円と高額な点は魅力です。
ぜひ記事を参考に、「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」への申請をご検討ください。
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