資金調達を考えた時に「信用金庫」からの融資を候補に入れる方もいらっしゃるでしょう。
特に規模が小さい中小企業の場合は、都市銀行や地方銀行よりも、地域に根差した信用金庫の方が融資を受けやすいことがあります。
銀行と信用金庫の違いはどんなところにあるのでしょうか?
こちらの記事では、信用金庫を利用するメリットや信用金庫で提供している融資商品、申込みの手続きについて紹介します。
銀行・信用金庫・信用組合の違いは?
銀行・信用金庫・信用組合は預金や融資など同じような金融サービスを行っているように感じるかもしれません。
たしかにサービス内容は似ていますが、それぞれ適用される法律や理念が異なることを理解しておくと、事業者や利用シーンによってベストな金融機関を選ぶのに役立ちます。
それぞれの違いを具体的に理解しておきましょう。
銀行株主の利益が優先される銀行
銀行は銀行法に基づき運営されています。
銀行の形態は「株式会社」であるため、基本的には銀行の株主の利益が優先されます。
また銀行の融資を利用するにあたり、特別な会員資格などはありません。
地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした信用金庫
信用金庫は信用金庫法に基づき運営されており、地域の方々が利用者・会員となって互いに地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした協同組織の金融機関です。
そのため、主な利用者は信用金庫がある地域で活動を行う中小企業や個人となり、利用者や会員の利益が優先されます。
銀行とは異なり、会員の出資による協同組織の非営利法人として運営されているのが特徴です。
会員資格は信用金庫がある地区内で以下の条件のいずれかを満たす人になります。
- 住所または居所を有する者
- 事業所を有する者
- 勤労に従事する者
- 事業所を有する者の役員
なお、事業者の場合は従業員300人以下または資本金9億円以下であることが必要です。
預金は会員以外でも利用することができますが、融資は原則として会員が対象となります。
ただし、制限つきで会員外貸出もできる場合もあります。
信用組合は原則会員しか預金もできない
信用金庫と名前が似ている信用組合には、どのような違いがあるのでしょうか。
信用組合は、信用金庫と同じ協同組織の金融機関ですが、中小企業等協同組合法協同組合による金融事業に関する法律(協金法)により作られています。
組合員の出資による協同組織の非営利法人という点で、信用金庫と運営方法は似ていますが、組合員資格が異なります。
組合員になることができる人は信用組合がある地区内において以下の条件のいずれかを満たす者です。
- 住所または居所を有する者
- 事業を行う小規模の事業者
- 勤労に従事する者
- 事業を行う小規模の事業者の役員
なお、事業者の場合は、従業員300人以下または資本金3億円以下であることが必要です。
(卸売業は100人または1億円、小売業は50人または5千万円、サービス業は100人または5千万円)
また、預金は原則として組合員を対象となりますが、総預金額の20%まで組合員以外でも預金することが認められています。
融資は原則として組合員が対象となりますが、制限つきで組合員でない人に対しても貸出ができます。
参考:一般社団法人 全国信用金庫協会
https://www.shinkin.org/shinkin/difference/
企業の規模によってメインバンクは異なるのか?
メインバンクとは、預金や決済、融資などをメインとして行う金融機関のことです。
中小企業庁が委託したみずほ総合研究所の調査によると、企業の売上規模によりメインバンクとする金融機関の業態に違いがあることがわかりました。
売上規模1億円未満の企業と、売上規模1億円〜5億円未満の企業のメインバンクは以下の割合です。
メインバンク種類 | 売上1億円未満の企業 | 売上1〜5億円未満の企業 |
都市銀行 | 19.8% | 21.4% |
地方銀行・第二地方銀行 | 46.3% | 49.4% |
信用組合・信用金庫 | 29.8% | 25.7% |
政府系金融機関 | 3.1% | 2.2% |
多少の差ではありますが、売上規模が大きい企業の方が、メインバンクが都市銀行・地方銀行のことが多く、信用金庫・信用組合がメインバンクとなることは少ない傾向にあります。
また、どの売上規模においても地方銀行・第二地方銀行をメインバンクとする企業が多いといえます。
出典:中小企業庁
信用金庫で融資を受けるメリット3つ
さきほどの調査の通り、信用金庫をメインバンクとして利用しているのは、売上規模が小さい中小企業に多い傾向があります。
ここでは、信用金庫で融資を受けるメリットについて見ていきましょう。
中小企業などに対する融資にたいして前向き
信用金庫で融資を利用するメリットは、中小企業・小規模事業者・個人事業主に対する融資姿勢に対して前向きなことです。
銀行の取引の場合、門戸は広いですが業績や財務状況で融資の有無が判断されるので、業歴が短く事業規模が小さい会社などは「信用力がない」と判断されて融資を受けられない可能性があります。
しかし、信用金庫の場合は会員が地域の中小企業となるため、銀行に比べると中小企業に対して歩み寄る姿勢が強いといえます。
担当者が一生懸命対応してくれる
都市銀行や地方銀行の場合は、利益を求めた運営なので、どうしても融資額が大きい大企業や中堅企業に対する営業活動を優先させてしまいます。
なぜなら、融資額が大きいほど銀行として得られる金利による利益も大きくなるからです。
そのため、取引を始めたものの融資額が少ない中小企業のところにはあまり通ってくれない、情報提供が少ないと感じてしまうことがあるでしょう。
その点、地域の企業の発展を目的としている信用組合は、融資額の小さな取引先に対しても、どうすれば担当の企業の業績が良くなるかなどの相談にも熱心に応じてくれます。
地元企業の販路拡大や提携先を探すなどのビジネスマッチングに対応してくれる場合もあるようです。
信用金庫の会員になると優遇金利などがある
株主会社である銀行の株主になったからと言って、配当以外で得をするということはありません。
しかし、信用金庫の会員となった場合は、融資を受けるときに会員に対する金利優遇などもあります。
融資だけではなく、定期預金金利の優遇もあり、銀行と比べると高い金利が付くこともあるのです。
銀行・信用金庫・信用組合の違いは?
信用金庫では、中小企業などに対する融資に前向きで、担当者も熱心に対応してくれる上、会員なら優遇金利があると言ったメリットがあることを紹介してきました。
一方で、次の2点には留意が必要です。
ATMなどのインフラが弱い
信用金庫から融資を受けるにあたり、口座の入出金が増えることになりますが、信用金庫のインフラは銀行に比べると弱いです。
たとえば、ATMが少なかったり、今では利用者が多いインターネットバンキングで利用できるメニューが少なかったりということがあります。
そのため、入出金の際にはATMがある店舗に出向かなければいけないなど、利便性が低いと感じるかもしれません。
都市銀行や地方銀行に比べると融資できる上限が低い
信用金庫の融資における原資は、地域の方や会員の預金です。
そのため、融資限度額が少ないと感じる場合もあるでしょう。
事業規模が拡大したことにより、億単位の融資が必要になった場合には都市銀行や地方銀行に比べると物足りなさを感じるかもしれません。
信用金庫で借りることができる融資の種類は?
信用金庫の融資は、信用金庫ごとの条件や種類があります。
ここでは「東京東信用金庫」の融資商品を例にどのような融資があるのかを紹介していきます。
お住まいの地域・事業を行う地域の信用金庫の融資商品はHPなどで確認してください。
東京東信用金庫(ひがしん)の「さくせす行進曲」という融資商品は、運転資金や設備資金などの幅広い事業資金に利用できます。
利用対象者は以下の通りです。
- ひがしんの営業区域内の現在地で原則2年以上営業している法人または個人事業所
- 融資・定期積金取引がある先は、直近6ヵ月間遅延していないこと
- 安定継続した収入のある法人または個人事業所
- はじめてお取引いただく場合、手形交換所での事故等がないこと
- 借入依存度が50%以下の先
- 反社会的勢力でない方
※純新規貸出先の貸出限度額は既貸出先と同様。決算書3期分の分析をした上で判断。
融資額は10万円以上5,000万円以内で、返済期間は10年以内、金利は変動金利です。
融資限度額については、当金庫事業者ローンの残高を合算し、直近決算2期の平均月商の3ヶ月以内が上限となります。
担保は原則必要ありませんが、法人の場合は代表者が連帯保証人になる必要があります。
参考:東京東信用金庫
なお、業歴が短かったり、業績が安定していない場合には、信用金庫のプロパー融資が利用できないケースもあるでしょう。
そのような場合には、信用保証協会の保証を利用した融資を勧められるかと思います。
保証協会の保証をつけることにより、信用金庫の融資に対するハードルが下がり、融資がしやすくなるからです。
信用保証協会の保証を利用した融資については、銀行からの融資と大きな違いはありません。
詳しくは保証協会を利用した借入について紹介した記事を参考にしてください。
信用金庫から融資を受けるために準備すべき書類
融資を申込む場合、信用金庫の窓口で申込をすることができます。
以下の書類を申込時に準備しましょう。
- 融資の申込書
- 印鑑証明書(申込者個人のもの)
- 事業に必要な許認可またはその写し(届け出や認可が必要な業種のみ)
- 商業登記簿謄本(法人の場合)
- 個人事業の開廃業等届出書(個人の場合)
また、融資の種類によっては以下のような書類の提出を求められることもあります。
- 所得証明書または課税証明書
- 創業から現在までの事業資金の流れがわかるもの
- 定款の写し(法人の場合)
- 見積書のコピー
- 契約書のコピー
- 不動産登記簿謄本(全部事項証明書) (不動産を担保にする場合)
- 創業計画書
- 信用保証協会の申込書
初めて利用する場合は申込〜審査〜実行までに1か月ほど時間がかかる場合もあります。
利用を希望する場合は、なるべく早く信用金庫に相談して、必要になる書類を確認したほうが良いといえます。
まとめ
信用金庫は、地域の発展を目的としているため、銀行などに比べると規模が小さい会社に対しても前向きな姿勢で接してくれます。
そのため、売上規模が小さい企業が信用金庫をメインバンクとして利用しているケースもあるということが調査からわかりました。
信用金庫の融資を利用できるのは、信用組合がある地区内において以下の条件のいずれかを満たす者です。
- 住所または居所を有する者
- 事業所を有する者
- 勤労に従事する者
- 事業所を有する者の役員
また、業績や業歴に不安があると判断されプロパー融資が受けられない場合でも、信用保証協会の保証付きの融資になる可能性もあります。
利用できる融資の種類や申し込み書類などは各企業の状況によりことなるので、管轄となる信用金庫へぜひ相談してみてください。
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