異分野の中小企業者が、連携して新事業分野の開拓を行う「新連携」。
この新連携を支援するために、補助金など様々な制度があります。
そこで今回は「新連携補助金(商業・サービス競争力強化連携支援事業)」制度の概要を中心に、「新連携」についてご紹介していきます。
新連携・新連携計画・新連携補助金とは?
まずは基本知識として、新連携・新連携計画・新連携支援・新連携補助金がどのようなものかをご紹介します。
新連携とは?
「新連携」とは、中小企業庁によれば次のように定義されています。
異分野の事業者が有機的に連携し、その経営資源(設備、技術、個人の有する知識及び技能その他の事業活動に活用される資源)を有効に組み合わせて、新事業活動を行うことにより新たな事業分野の開拓を図ること。
中小企業庁 新連携の概要より
新連携計画とは?
新連携計画(正式には「異分野連携新事業分野開拓計画」)とは、「複数の中小企業者が連携し新市場の創出や製品・サービスの高付加価値化を目指す取り組み」を支援する、経済産業省の事業です。
複数の中小企業者によって、基本方針に沿った計画を作成し、各地を管轄する経済産業局長に提出。
そこで認定を受けると、次項の「新連携支援」を受けられます。
ただし、令和2年10月1日の「中小企業成長促進法の施行」によって「異分野連携新事業分野開拓計画」が廃止されたため、「新連携計画」の新規認定の受付は終了しています。
(参考)
・中小機構:新連携の支援
なお、2021年度には最大1億円の大型補助金「事業再構築補助金」が開始します。
「事業再構築補助金」については以下に情報をまとめていますので、ぜひご利用ください。
【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説
【Q&A】最大1億円の「事業再構築補助金」について疑問に答えます
また、この他にも様々な中小企業向け補助金・助成金についてまとめた記事もありますので、参考にしてください。
【最新】中小企業が利用できる補助金・助成金13選!目的・金額・条件を徹底解説
新連携支援とは?
「新連携支援」とは、前項の「新連携計画」を提出し認定された連携体が、「新連携計画の実施に必要な資金の調達」のため、以下のような支援を受けられる仕組みです。
- 商業・サービス競争力強化連携支援事業(新連携補助金・新連携支援事業)
- 日本政策金融公庫による低利融資
- 信用保証の特例
- 中小企業投資育成株式会社の特例
- スタンバイ・クレジット制度
新連携補助金(商業・サービス競争力強化連携支援事業)とは?
新連携補助金(正式には「商業・サービス競争力強化連携支援事業」)とは、中小企業者が産学官での連携や異業種分野の事業者との連携を通じて行う「新しいサービスモデルの開発」のなかで、「地域経済を支えるサービス産業の競争力強化に資すると認められる取組」について支援する、経済産業省の事業です。
制度の目的は「異分野の事業者が有機的に連携し、その経営資源を有効に組み合わせて新事業活動を行うことにより、新たな事業分野の開拓を図ること」とされています。
「新連携支援」制度のひとつで、事業の略称として「新連携支援事業」とも呼ばれます。
新連携補助金の特徴は、「単独では申請できない」点です。
中小企業者を中心とした「連携体」を構成しなくてはなりません。
なお、新連携補助金の作業フローは下図のとおりです。
新連携補助金の要件
次に新連携補助金の要件として、補助対象者・事業・経費を解説します。
なお以前は、前述した「異分野連携新事業分野開拓計画の認定」が申請要件のひとつでしたが、令和2年度分からは不要になりました。
新連携補助金の補助対象者
新連携補助金の補助対象者は、次の5項目をすべてを満たす者です。
1.中小企業者(みなし大企業を除く)である
中小企業者とは、次の①~④をいいます。
①下表の事業者
業種 | 資本金 | 常時使用する従業員の数 |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業及び下記以外の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
②企業組合
③協業組合
④商工組合及び商工組合連合会など
2.異分野の複数企業者が参加し、役割が明確化している
「異分野」とは、「日本標準産業分類における4桁の細分類」が異なる異業種分野であることを指します。
「複数企業者」については、2以上の中小企業者の他に、大企業や大学、研究機関、NPOなどを加えることも可能です。
ただし、「半数以上が中小企業者」であることが必要となります。
また「共同購買を行うのみ」など、「新たな事業活動の創出につながらない」連携にある企業同士は、連携体とはみなされません。
3.大学などと連携し、役割分担が明確化している
大学・地方自治体・公設試等のいずれかと連携することが必要です。
ただし上記2の「連携体」に大学などが含まれている場合には、必要ありません。
なお「公設試等」とは、国公私立高等専門学校や大学共同利用機関等で、「試験研究に関する業務等を行う法人」を指します。
4.コア企業がプロジェクトを事業化させ、成長目標を設定する
「コア企業」とは、連携体のうち中核となる中小企業者のことです。
具体的な「成長目標」としては、事業終了後5年以内を目処に、コア企業が以下のどちらも達成する目標設定を策定します。
- 付加価値額が15%以上(年率平均3%以上)の向上
- 給与支給総額が7.5%以上(年率平均1.5%以上)の向上
5.補助金を交付されるものとして不適当でない
法人が暴力団であったり、法人の役員等が暴力団員であるときは「不適当」とされます。
新連携補助金の補助対象事業
新連携補助金の補助対象となる事業は、制度の目的に沿って行う取り組みで、次の2点のどちらも満たしていることが必要です。
- 新事業活動で、市場における事業を成立させる
- 新商品・新役務等に係る需要が相当程度開拓されるもので、具体的な販売活動が計画されているなど事業として成り立ち、継続的に成立する事業である
「新事業活動」が対象ですので、すでに相当普及している技術・方式の導入や、研究開発段階に留まる事業は補助対象となりません。
新連携補助金の補助対象経費
新連携補助金の補助対象となる経費は、事業の対象として明確に区分でき、かつ支払った金額を証拠書類で確認できるものとなります。
具体的には、下表の経費です。
経費区分 | 経費内容 |
---|---|
労務費 | ①研究員費 |
事業費 | ②謝金 ③旅費・交通費 ④会議費 ⑤借損料 ⑥知的財産権関連経費 ⑦雑役務費 ⑧マーケティング調査費 イ.展示会等事業費 ロ.市場等調査費 ハ.広報費 ⑨備品・消耗品費 ⑩機械装置等費 ⑪外注費 |
委託費 | ⑫委託費 |
なお「交付決定日よりも前に発注や購入、契約等を実施したもの」は補助対象外となります。
また1件当たり概ね10万円以上を要するものの発注先の選定については、原則として「2社以上から見積りをとる」ことが必要です。
新連携補助金の補助金・対象期間・補助率
新連携補助金の補助金・対象期間・補助率は下表のとおりで、事業類型によって補助率が異なります。
事業類型 | 補助上限額 | 補助対象期間 | 補助率 |
---|---|---|---|
IoT、AI、ブロックチェーン等先端技術活用型 | 3,000万円 | 2年度 | 2 / 3 |
一般型 | 3,000万円 | 2年度 | 1 / 2 |
事業類型「IoT、AI、ブロックチェーン等先端技術活用型」は、「IoT、AI、ブロックチェーン等を用いた事業開発を行う」ことが要件です。
また、2年度目は「初年度の交付決定額」が補助上限額となりますが、次年度の補助を保証するものではありません。
そして補助金の額は「経費区分ごとの補助対象経費に、補助率を乗じて得た額の合計額」です。
ただし「補助上限額」が上限となります。
新連携補助金の申請方法・申請期間・採択率
ここでは、新連携補助金の申請方法・申請期間・採択率をご紹介します。
新連携補助金の申請方法
新連携補助金の申請は、「連携体」のうち「中核となる中小企業者(コア企業)」が行います。
また業種を問わず、2つの事業類型(「IoT、AI、ブロックチェーン等先端技術活用型」と「一般型」)どちらでも応募可能ですが、同一法人・事業者での申請は一申請限定です。
補助金の交付申請は1年ごとに行い、年度後半に中間評価委員会で実施状況等の中間評価を行います。
評価の結果によっては、2年目の補助事業の縮小や交付を受けられない場合もあります。
そして令和2年度分からは、電子申請システム「J グランツ」での申請のみ受け付けることになりました。
この申請には「GビズID(gBizプライム)」の取得が必要で、審査には2~3週間を要する場合があります。
新連携補助金の申請期間
現時点では、令和3年度新連携補助金の申請期間はまだ公表されていません。
ちなみに、令和2年度分の申請期間は次のようになっていました。
- 令和2年2月18日(火)~ 令和2年4月21日(火)
新連携補助金の採択率
新連携支援事業の採択率は、下表の通りです(中小企業庁元年度・2年度より)。
実施年度 | 申請数 | 採択数 | 採択率 |
---|---|---|---|
令和2年度 | 119 | 39 | 33% |
令和元年度 | 68 | 34 | 50% |
令和2年度は、元年度にくらべ申請数が大幅に増加したため、採択率が大きく下がったようです。
新連携の事例紹介
記事の最後に、新連携の事例を紹介します。
今回紹介する企業のほかにも、以下のサイトで事例が紹介されているので、参考にご覧ください。
(参考)
マクタアメニティ㈱
福島県のマクタアメニティ㈱が構成した連携体では、「画像解析による野菜等の『おいしさの見える化』技術の構築」を行いました。
事業収益の獲得方法としては、当面は小売等の利用者からシステム使用料を徴収する仕組みです。
将来的には、技術指導やライセンス供与等による収益機会拡大を目指します。
㈱陣屋
神奈川県の㈱陣屋が構成した連携体では、「旅館向けリソース交換ネットワークサービスの事業化」を実施。
具体的には、旅館向けの基幹システム「陣屋コネクト」と、それをベースとした交換ネットワークサービス「JINYA EXPO」を開発しました。
この「陣屋コネクト」によって、陣屋は第2回日本サービス大賞総務大臣賞を受賞しています。
まとめ:新連携補助金を活用して新事業展開を
この記事では「新連携補助金(商業・サービス競争力強化連携支援事業)」制度の概要を中心に、「新連携」についてご紹介しました。
ご関心のある方は下記サイトもご覧ください。