「ものづくり補助金」公式事例から見る「採択事例」と「申請書(事業計画書)の書き方」を解説!

中小企業向けの補助金として人気の高い「ものづくり補助金」。
しかし2020年度の採択率は31%~62%と、採択されないケースも多くあります。

そして経済産業省では「中小企業向け補助金・総合支援サイト ミラサポPlus」のページにものづくり補助金の「公式事例」を記載し、「申請書の書き方のポイント」などを紹介しています。

そこでこの記事では、「ものづくり補助金」公式事例から「どのような採択事例があるのか」と「申請書の書き方にはどのようなポイントがあるのか」を、わかりやすく解説します。

ものづくり補助金の申請を検討されている経営者の方は、ぜひご覧ください。

ものづくり補助金の採択事例

まずは、ものづくり補助金の基本知識と、採択事例をご紹介します。

ものづくり補助金とは

ものづくり補助金(正式には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」)とは、中小企業・小規模事業者などが「革新的サービスの開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資」を支援する補助金の制度です。

次項でご紹介するように、応募件数が大変多く人気の高い補助金となっており、次の3つの事業類型が設けられています。

  1. 一般型:中小企業者などが行う「革新的な製品・サービス開発」や「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資などを支援する
  2. グローバル展開型:中小企業者などが海外事業の拡大・強化等を目的とした「革新的な製品・サービス開発」や「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援する
  3. ビジネスモデル構築型:中小企業が「 ①革新性・②拡張性・③持続性」をもつビジネスモデルを構築できるよう、30者以上の中小企業を支援するプログラムの開発・提供を補助する

また「一般型」の5次募集からは、新たに「低感染リスク型ビジネス枠」がつくられました。
補助率が「1 / 2 → 2 / 3」と増加し、「低感染リスク型ビジネス枠」で不採択になっても通常枠で優先的に採択されるなどの、メリットがあります。

「低感染リスク型ビジネス枠」については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

【2021年最新版】ものづくり補助金のコロナ特別枠「低感染リスク型ビジネス枠」の時期や補助金額を徹底解説!

 

ものづくり補助金の応募者数・採択者数・採択率

ものづくり補助金の、2020年度「一般型」の応募者数・採択者数・採択率は、下表の通りです。

締切回 応募者数 採択者数 採択率
1次(3/31締切) 2,287 1,429 62%
2次(5/20締切) 5,721 3,267 57%
3次(8/3締切) 6,923 2,637 38%
4次(12/18締切) 10,041 3,132 31%
合 計 24,972 10,465 42%

また、下グラフ「申請件数の推移」でわかるように、1→4次締切と後半になるにつれて申請者数が増えていますが、採択率は右肩下がりとなっています。

申請件数の推移 出典:ものづくり補助金総合サイト

ものづくり補助金の採択事例

ここでは、経済産業省・中小企業庁が運営するサイト「ミラサポplus」に記載された、ものづくり補助金の採択事例3件をご紹介します。

【採択事例①】西光エンジニアリング株式会社

出典:ミラサポplus
  • 補助事業:量産用CNF(セルロースナノファイバー)濃縮装置の開発
  • 支援者:岡部町商工会
  • 補助金交付額:10,000,000円

従業員9名のうち8名がエンジニアという「技術集団」である西光エンジニアリングは「量産用CNF濃縮装置」の開発のために、ものづくり補助金を利用することにします。

申請では「CNFの概要」を記載し、事業計画書をコンパクトに作成するといった点に気をつけ、岡部町商工会に「最終的な確認」を依頼しました。

補助金によって、2020年11月に量産用CNF濃縮装置の1号機が完成。
現在はCNF濃縮品のサンプルなどを使い、取引先との商談を進めています。

【採択事例②】福地金属株式会社

出典:ミラサポplus
  • 補助事業:金型の内製化により、冷間鍛造部品の短納期、低コストでの開発力を強化する
  • 支援者:ー
  • 補助金交付額:10,000,000円

大阪市で「冷間鍛造による部品加工」を営む福地金属。
海外との価格競争が激化するなか、生き残りの鍵を握る「小ロット・短納期・難形状」に必要となる「マシニングセンターの設備導入」のために、ものづくり補助金の活用を考えます。

社長にとっては初めての補助金申請でしたが、「マシニングセンター導入で納期を大幅に短縮できること、価格競争力が高まること」を、グラフや表で丁寧に説明。

補助金でマシニングセンターを導入し、金型を内製化したことで、短納期対応が可能になりました。
現在は「短納期で複雑な加工ができる体制づくり」を進めています。

【採択事例③】福田製パン合資会社

出典:ミラサポplus
  • 補助事業:焼きたてパンの納入及びアレルギー対応パンや地元産品を使ったパンの開発
  • 支援者:磐田市商工会
  • 補助金交付額:10,000,000円

静岡県磐田市内の学校や福祉施設などに、製造したパンを販売している福田製パン。
「アレルギーに対応したパンの製造」と「生産性向上」のために「新しいパン釜(新型オープン)」の購入が必要として、補助金申請を行います。

支援者である磐田市商工会からは、「審査項目の『政策面』を意識しながら、地域貢献の面を強調する」といったアドバイスを受け、事業計画書を作成しました。

補助金によって、平成30年12月に強加熱の新型オーブンを設置。
焼き上げる量は増え、焼き上げ時間が大幅に短縮するなど生産性が向上し、アレルギー対応パンは幼稚園や保育園からの注文が大きく増えました。

【採択事例④】松下農園

出典:ミラサポplus
  • 補助事業:環境制御システム導入による高糖度ミニトマトの生産効率向上への挑戦
  • 支援者:静岡県よろず支援拠点
  • 補助金交付額:10,000,000円

2015年に創業された松下農園では、「質の高いミニトマトを作るためには、ハウスの環境制御設備の導入が欠かせない」と考え、補助金申請に挑戦します。

しかし支援者からは「経営のヒントになるような『革新性』がなくては採択されない」との厳しいアドバイスが。
そこでアドバイスに従い事業計画書をブラッシュアップしていき、採択されます。

令和元年9月には、補助金を活用して自動カーテンやミスト発生装置などを導入し、収量・品質が向上しました。
また、事業計画書づくりによって「自園の強み・特色」が明確になり、説得力のあるセールストークができるようなったといいます。

なお、ものづくり補助金の最新の傾向等についてより詳細な解説を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

【ものづくり補助金まとめ】制度概要や申請方法、採択結果などわかりやすく解説【2021年度版】

また、最大1億円と大型の補助額が注目される「事業再構築補助金」の制度について知りたい方は以下の記事も参考にしてください。

【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説

ものづくり補助金の公式事例から見る「申請書(事業計画書)の書き方」のポイント

次に、ものづくり補助金の公式事例から見る「申請書(事業計画書)の書き方」のポイントを解説します。

申請書(事業計画書)の記載項目と審査項目

ものづくり補助金の申請には「事業計画書」が必須で、審査では提出した計画を外部有識者からなる審査委員会が評価し、より優れた事業提案を採択します。

そのため申請においては「いかに審査項目に合致した、わかりやすい事業計画書をつくるか」が最重要です。

審査項目は次の3点。

  1. 技術面:取組内容の革新性、課題や目標の明確さ など
  2. 事業化面:事業実施体制、市場ニーズの有無 など
  3. 政策面:地域経済への波及効果、ニッチトップとなる潜在性 など

そして事業計画書には、次の要素を含んだ項目を記載します。

事業計画書の記載項目 記載要素
その1:補助事業の具体的取組内容 事業の現状、課題と解決策、実施体制スケジュール、その他
その2:将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果) 市場、事業効果
その3:会社全体の事業計画 5カ年の事業計画、積算根拠

「事業計画書全体」についての書き方のポイント

ここからは、各分野にわけて「書き方のポイント」をご紹介していきます。

経営者コネクト
経営者コネクトでは、以下の書き方のポイントを十分に満たした申請書作成をサポートしています。
初回の相談は無料ですので、ぜひ以下のサービスページより詳細をご確認ください。
 

 

[全体①]専門性・新規性の高い技術を分かりやすく説明

西光エンジニアリングでは、補助事業の取り組みを理解してもらうためには「CNF」の基本的な知識が欠かせないとして、「①CNFとは」・「②CNFの製造方法」・「③最近のCNFの活用への取組」の3項目の表を作成しました。

出典:ミラサポplus

また「専門知識や専門用語を避け、できるだけ分かりやすい言葉で記述」することが重要と考え、専門性の高い項目には必ず「注釈」などをつけています。
さらに課題に「顧客の要望(声)」を入れることで、少しでも理解しやすいように注意しました。

出典:ミラサポplus

[全体②]審査項目を意識しながらコンパクトに記載する

ものづくり補助金 公募要領では、事業計画書(その1~3)について「A4・10ページ以内で記載すること」を推奨しているため、限られた紙数のなかで説明することが重要です。

そこで西光エンジニアリングでは、表などを使いできるだけコンパクトな記載を心がけました。

また技術面だけでなく、事業化面、政策面などの「審査項目を考慮した事業計画書」を作るためには、客観的な第三者の目が欠かせないと考え、岡部町商工会に事業計画書の最終確認を依頼しています。

出典:ミラサポplus

[全体③]グラフ・表・写真を使ってわかりやすく書く

福地金属は、ものづくり補助金の経験者である経営者仲間から「白黒で字ばかりの計画書ではなく、グラフを使うように」と言われます。

そこで表計算ソフトでグラフをつくり、製造工程表をつくり、製品や治具などの写真を撮って計画書をまとめていったところ、「自社の課題」が整理されていき、「これから会社がやるべきこと」が明確になるというメリットもありました。

出典:ミラサポplus

記載項目「その1:補助事業の具体的取組内容」の書き方のポイント

[その1−①]補助事業が課題解決につながることを説明

福地金属が事業計画書で「課題」として挙げたのが、大手企業が苦手とする「小ロット・短納期対応」。
そこで、マシニングセンター導入によって納期を大幅に短縮できる点と、内製化よるコストダウンで価格競争力が高まる点を、グラフや表で丁寧に説明します。

出典:ミラサポplus

また新規受注のために「短期間での金型開発力」をPRし、「生産ロット500個以下、年間3,000個以下でも1ヶ月納期」といった小ロット対応力をアピールすることを記載しています。

出典:ミラサポplus

[その1−②]具体的な数字を挙げつつグラフ化する

審査項目の「革新性」は、単なるアイデアでは不十分で、実現するための具体的な方法が求められます。

そこで松下農園では、「解決策(取組内容)」に具体的な数字を挙げつつグラフ化することで、説得力を与えました。

出典:ミラサポplus

[その1−③]事業効果とガイドラインとの関連性を示す

ものづくり補助金では、「応募申請する事業分野」に次の2分野があり、それぞれガイドラインとの関連性を説明する必要があります。

  1. ものづくり(試作品開発・生産プロセス改善)中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針
  2. サービス(サービス開発・新提供方式導入)中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン

福田製パンはサービス区分で申請したため、ガイドラインにある「具体的な取り組み」のうち、「新規顧客層への展開」・「商圏の拡大」・「独自性・独創性の発揮」・「顧客満足度の向上」の4点に関して、事業効果との関連性を記載しました。

出典:ミラサポplus

記載項目「その2:将来の展望」の書き方のポイント

[その2−①]具体的なターゲット顧客・商談状況を記載する

申請書に「事業化に向けての市場性」について記載する必要があるため、西光エンジニアリングでは「具体的なターゲット顧客」として、顧客先を具体的な社名で記載しました。

将来の展望については「市場規模・市場ニーズ」だけではなく、「誰に売るのか」という顧客像を示すことも大切ではないかと言います。

出典:ミラサポplus
出典:ミラサポplus

[その2−②]事業効果は算出根拠を明確にし、具体的な数字で示す

松下農園は、「ミスト発生装置の導入」や「除湿器の導入」による効果を具体的な数値として挙げることで、事業計画の積算根拠として明確に示しました。

また従来の温室の栽培データと比較しながら述べることで、事業計画の積算根拠の説得力がさらに増すようにしています。

[その2−③]相乗効果による売上増を強調する

ヤマサキ農場では、「将来の展望(事業効果)」について説得力を与えるため、既存商品との相乗効果を強調しました。

コーディネーターからは「補助事業による設備投資が、売上増につながることを具体的に説得力をもって記述するように」とのアドバイスが。

そこで、オリジナル商品「ゆずたま」という強みを広げることで「将来の売上増につながる具体的なイメージが伝わるようにした」とのことです。

出典:ミラサポplus

「審査項目」に対する書き方のポイント

[審査項目①]こだわりとビジョンを明確にする

松下農園では「中小企業のお手本になる、経営のヒントになるような『革新性』が必要」と支援者からのアドバイスがあったため、自園のこだわりとビジョンを明確にします。
そして、他の事業者との違いや差別化のポイントが伝わるように、工夫しました。

目指す先には「植物工場」という大きなビジョンがあったため、そのビジョンに基づいてストーリーを構築することで「革新性」を打ち出せています。

出典:ミラサポplus

 

まとめ:公式事例記載のポイントを踏まえた申請書作成を

この記事では、「ものづくり補助金」公式事例から「どのような採択事例があるのか」と「申請書の書き方にはどのようなポイントがあるのか」を、わかりやすく解説しました。

ぜひ記事の内容を参考に、公式事例に記載のポイントを踏まえた申請書作成を行ってください。

また採択事例からわかるとおり、支援者の存在も大きいと言えます。
「ものづくり補助金申請におけるコンサルの依頼」を検討している方には、こちらの記事もオススメです。

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