民事再生法とは? そのメリットデメリットや流れを詳しく解説!

民事再生法とは、経済的窮状にある債務者の事業または経済生活の再生を目的に定められた日本の法律です。

1999年(平成11年)12月22日に交付され、2000年に施行されました。

この法律の手続きを利用できる債務者の範囲については法律上、特段の制限はなく、個人及び株式会社、その他の法人などが利用可能です。

しかし法律は主として中小企業の再生に用いられることを想定して作られています。

そこでこの記事でも、民事再生法の適用対象を法人に限定して、民事再生の内容、メリットデメリット、その流れなど詳しく解説します。

民事再生とは

まずは民事再生の意義及び法律が使える状況等について解説します。

民事再生とは?

民事再生とは、民事再生法に基づく裁判手続きのことをいいます。

その目的は、経済的に行き詰まった状況にある企業に対して、会社債権者等の利害関係者の同意の下、再生計画を作って、これを遂行しつつ、同時に関係者の利害を適切に調整して、最終的に企業の再建を図ることをめざしています。

一方民事再生手続きは、債権者の無担保債権のみ制約でき、担保権を持つ債権者は制約できません。

そのため再生計画案でも債務をカットできるのは無担保債権のみとなります。

その点、担保債権まで含んで制約できる会社更生法と比べても、民事再生法に基づく民事再生は、手続きが簡素な分、中小企業向きの再建方法といえるでしょう。

民事再生の種類

民事再生には大きく分けて3つの種類があります。

自力再建型、スポンサー型、清算型がそれです。

それぞれの特徴を簡単に紹介します。

  • 自力再建型…債権の一部カット後、本業収益から再生債権を弁済して自力再建をめざすやり方
  • スポンサー型…大手企業等のスポンサーから資金援助を受け、民事再生による信用不安を払拭しつつ再建を図る方法
  • 清算型…自社事業のうち、事業譲渡で収益が期待できる事業を受け皿会社に移し、その売却益で債務を返済して、最終旧会社を清算する方法

民事再生が使える状況

企業が民事再生を裁判所に申し立てできる状況は民事再生法第21条に定められています。

その状況を要約していえば、「企業が支払不能または債務超過となる恐れがある場合」、または「無理して払えないこともないが、払ったら資金繰りの悪化から事業の継続が難しくなることが予想される場合」のどちらかです。

ただし企業が上記の条件を満たしたら、誰でも民事再生を申し出できて裁判所に認められるというものではありません。

民事再生はあくまで法的に債務を一部カットしてもらい企業を再建させることが最終目的なので、企業自体、再建できるための一定の条件を満たしておかねばなりません

その条件とは以下のような5つです。

  1. 法律に即した民事再生手続きの正当な申し立て原因があること
  2. 一定の数の債権者に同意してもらえる再建計画案が策定できること
  3. 民事再生手続きに関する費用や当面の事業継続に関する運転資金を準備できること
  4. 公租公課である税金や社会保険料の滞納額が極力少ないこと
  5. 手続きで認められた債務免除額を超える、または相殺できる程度の繰越欠損金があること

さらに条件➁の「一定の数の債権者に同意してもらえる再建計画案が策定できること」では再建計画案の諾否を決める債権者集会で以下の2つの条件が満たされねばなりません。

  • 集会に参加した議決権者の過半数の同意が得られること
    (頭数要件)
  • 欠席者含む議決権者の議決権総数のうち、議決権を要する者の2分の1以上の同意が得られること
    (議決権要件)

以上のような諸条件を企業が満たした上で、初めて民事再生が裁判所で認められることになります。

民事再生のメリット及びデメリット

この章では、民事再生が認められたとして、それが持つメリット及びデメリットについて解説します。

民事再生のメリット4つ

民事再生のメリットは主に4つあります。

民事再生後も事業は継続可能

破産手続きすれば会社がなくなるので当然事業は継続不可ですが、民事再生だと債務の一部免除や弁済猶予が受けられて、その上会社は事業を継続できます。

事業を続けたい経営者にとってこれは大きなメリットです。

民事再生後も現経営者が会社に残れて経営権を維持できる

会社更生法が適用されると現経営者陣は全員経営から退く必要がありますが、民事再生法に基づく民事再生では経営者は退陣する必要がありません

そのまま会社に残って経営に参加することもできます。

これは手続き開始後も一定の影響力を会社に及ぼしたい現経営者にとって朗報です。

民事再生に反対の立場の債権者がいても手続きは進めることができる

民事再生計画の同意に関しては、債権者全員の同意は必要なく、法律に定める一定数の債権者の同意が得られれば再生計画は成立します。

一方事業再生手法のひとつである私的整理では、成立の要件として必ず関係者全員の同意が必要なので、これは民事再生の大きなメリットといえるでしょう。

民事再生が裁判所に認められれば、当面の経営資金が確保できる

民事再生の手続きでは、申し立てを裁判所に行うことで、裁判所から主たる債権者である金融機関に対してその事実が通知されます。

すると通知を受けた金融機関としては、たとえ申し立てした企業(債務者)の売上げ等の代金が自行の取引口座に振込されてきても自行債権(融資金等)と相殺できなくなります。

企業にとって当面の運転資金を確保できるという意味では、これも民事再生に派生するメリットといえるでしょう。

民事再生のデメリット5つ

一方民事再生のデメリットは5つ考えられます。

それが以下の5つです。

民事再生の手続き後、会社の社会的信用度が低下する

民事再生は破産処理手続きのひとつと見なされる法的処理です。

またその手続きを開始したことは裁判所を通じて債権者等、関係先に通知されます。

そのため法的処理を開始したことが取引先や金融機関に知れると、それを契機に信用不安が発生することがあります。

会社に対するそれまでの対応に大きな変化が出る可能性もあるため、デメリットのひとつといえます。

債権者に担保権を実行されて事業継続が難しくなるリスクがある

民事再生の手続きで債権者の債権カットが可能なのは無担保債権のみです。

担保債権を持っている債権者までその効力は及びません

そのため、民事再生を契機に銀行等の債権者が自行の担保物件を競売に出してしまって、かつそれが会社事業の核となる工場等の土地建物だとすると、以後会社の再建が進まなくなるリスクが発生します。

債権者から経営者が会社に残ることに反対される

民事再生では現経営者が会社に残れることをメリットに上げましたが、逆に債権者の多くにその対応を強く反対されて、それが原因となって再生手続きが進まないこともあります。

債権者の多くが「現経営者の放漫経営が経営不振の原因」と判断するとき、そのようなことが起きがちです。

会社が一定の資金が用意できないと民事再生手続きがうまく進まない

民事再生といっても手続きには一定の資金が必要です。

たとえば、民事再生に係る申し立てや法律相談、裁判所への書類提出で弁護士・公認会計士等に支払う費用、そして申し立てに当たり裁判所に納める予納金が必要です。

予納金は会社の負債総額に応じて最低でも200万円から1,000万円以上必要になります。

会社が必要な費用を調達できなければ当然民事再生の手続きができません。

納税リスクとして債務免除課税が発生する

再生計画では、債務免除が認められるとその免除額に対して債務免除課税が発生します。

しかしその税金が払えないと、再生計画が進まないリスクが発生します。

一方、裁判所に申し立て時点で、会社に繰越損失、固定資産の譲渡損失、繰延資産の評価損等があれば、その額を債務免除額と相殺できるので納税を免れる可能性もあります。

民事再生の流れ

最後は民事再生手続きの流れについてです。

再生手続きは以下のSTEP1からSTEP10の順で行われます。

STEP1民事再生申し立て可能かどうか、弁護士相談

いくら会社が民事再生できるといっても、全ての企業が裁判所に申し立てできるわけではありません。

「民事再生が使える状況」でも詳しく述べたように、会社としても一定の条件を満たさねば申し立てしても却下されます。

まずは知り合いの弁護士に相談して、公認会計士・税理士にも会社資料を精査してもらい、民事再生の申し立てができるかどうかチェックしてもらいましょう。

STEP2民事再生手続き及び弁済禁止の保全処分の申し立て

弁護士等の専門家が申し立てできる可能性ありと判断してくれると、まずは弁護士と委任契約を結びます。

以後はその弁護士が依頼企業の法的代理人として債権者への説明や裁判所への手続きを行ってくれます。

当初の手続きでは、民事再生申し立て、会社の債務に係る保全処分申し立て、予納金の納付などありますが、専門家と協力して粛々と手続きを進めるようにして下さい。

STEP3裁判所による弁済禁止の保全処分決定及び監督委員(弁護士)の選任

申し立てに対して裁判所から保全処分の決定がなされ、債権者に通知されます。

通知が行われると以後会社として融資の返済や仕入先への支払をしなくてよくなり、入ってくる資金が保全されます。

一方民事再生の監督委員(この場合弁護士)が裁判所より選任され、以後はその弁護士が手続きを全て代行して行うことになります。

STEP4民事再生に関する債権者説明会の開催

次のステップとして、会社が主催して民事再生に関する債権者説明会を開催します。

この会では、会社の債権者に集まってもらい、民事再生に至った経緯、財産負債の状況、今後の手続きの進め方などを説明して理解を求めるとともに、今後も引き続き取引を継続してもらうことと再建に向けての協力を求めます。

STEP5裁判所による民事再生手続き開始決定

申し立てから2週間以内をめどに裁判所から民事再生手続きの決定がなされてその内容が債権者に通知されます。

また開始決定の通知を受けとった債権者は裁判所に対して自分の債権の届出を行います。

STEP6財産評定・財産及び業務の状況書類を裁判所に提出

会社としては、公認会計士・税理士等のサポートも受けて必要書類を作成、裁判所に提出します。

STEP7債権認否書の裁判所への提出

債権認否とは、債権者から裁判所に届けのあった各債権を、会社(債務者)が金額とともにその存在を調査・確認する作業のことをいいます。

また会社は確認作業終了後、遅滞なく裁判所に結果書類を提出しなければなりません。

STEP8再生計画案の作成

債権認否書の裁判所への提出が終わると、次はいよいよ再生計画案の作成手続きです。

再生計画案では、弁護士や公認会計士のサポートを受けて、債権者にどのように債務を免除してもらうか、免除後の残債務をどれぐらいの期間を掛けて返済していくか、綿密に書面化します。

作成のポイントはとにかく、債権者及び裁判所双方に対して、いかに納得してもらえる再生計画案が作れるかに尽きます。

そのため細心の注意を払って計画案を作成しましょう。

そして作成できたら計画案を裁判所に提出しておきます。

STEP9再生計画案の決議・認可

会社はあらためて債権者集会を開催して、債権者に再生計画案を示して決議してもらいます。

決定の諾否は多数決で行い、決定は「民事再生が使える状況」で説明した「頭数要件」「議決権要件」が満たされることで決まります。

そして債権集会で再生計画案の同意が得られ、その後裁判所の追認決定が得られると(通常は追認されます)、いよいよ会社は再生計画に沿って債務の返済をスタートします。

STEP10再生計画の遂行・完了

債権者の同意と裁判所の決定を受けて、会社として再生計画案に沿って粛々と会社再建を進めます。

一方裁判所との関係では、再生計画認定開始から向こう3年間、会社は裁判所の監督下で返済を続ける義務があります。

また会社としてはその遵守状況を定期的に裁判所に報告する義務も負っています。

さらに3年目以降、本件に関して裁判所は終結の決定を行って以後本件からは離れますが、会社としてはそのまま再生計画に沿って返済を続けていくことになります。

そして債務免除後の全債務を返済できると、最終的に会社として再生計画は完了となります。

以上が民事再生手続きの全プロセスです。

・参照先: E-GOV法令検索 民事再生法

民事再生法 | e-Gov法令検索 (e-gov.go.jp)

まとめ

民事再生法とその法に基づく民事再生について、その内容やメリット及びデメリット、手続きの流れなど詳しく紹介してきました。

一般的に民事再生の手続きに要する期間は、申し立てから再生計画案決議まで5~6カ月、計画案認可決定から債務の弁済完了まで最長で10年かかるといわれています。

また会社の民事再生が申し立てできる条件も決して甘いものではありません。

それでも経営困難に陥った中小企業が、破産でなく再建できる道が民事再生法で法的に担保されていることは決して悪いことではないでしょう。

この記事が経営的に苦境にあえぐ中小企業の解決に少しでも役立つことを願います。