「中小企業経営強化税制」・「中小企業投資促進税制」の延長・変更点を解説【令和3年度税制改正】

令和3年(2021年)度税制改正により、「中小企業経営強化税制」と「中小企業投資促進税制」の2つの制度で、適用期限が延長されることになりました。
また、中小企業経営強化税制では計画認定手続が柔軟化されるなど、いくつか変更される点も。

そこでこの記事では、「中小企業経営強化税制」と「中小企業投資促進税制」の、適用期限延長と制度の変更点について解説していきます。

制度の利用を検討されている経営者の方は、ぜひご覧ください。

中小企業経営強化税制・中小企業投資促進税制とは?

まずは、「中小企業経営強化税制」と「中小企業投資促進税制」の基本情報をご紹介します。

中小企業経営強化税制とは?

中小企業経営強化税制は、「中小企業の”稼ぐ力”を向上させる取組」を支援することを目的としています。
このために、中小企業等経営強化法の認定を受けた「経営力向上計画」に基づく投資について、「即時償却」または「10%の税額控除 (資本金3,000万円超の中小企業者等は7%)」 のいずれかを選択できる制度です。

経営力向上計画とは?

「経営力向上計画」とは、人材育成やコスト管理のマネジメントの向上など、自社の経営力を向上する計画を立案し、国に申請して認定された事業者が、税制や金融の支援等を受けられる制度です。

また計画申請時には、経営革新等支援機関のサポートを受けることができます。

出典:北海道経済産業局

中小企業経営強化税制の制度概要

中小企業経営強化税制の制度概要は、次の通りです。

適用対象者

制度が適用される対象者は、適用期限内に経営力向上計画の認定を受けた、青色申告書を提出する「中小企業者等」です。

「中小企業者等」とは、以下の者を指します。

  • 資本金又は出資金の額が1億円以下の法人
  • 資本金又は出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
  • 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
  • 協同組合等

適用期限

当初は適用期限が「2017年4月1日~2021年3月31日」でしたが、後述するように2年延長されます。

対象設備

制度には次の類型があり、それぞれ対象となる設備が異なります。
また後述する通り、税制改正によって新たに「D類型」が追加されます。

出典:中小企業税制

指定事業

制度対象となる指定業種は、以下の通りです。

  • 製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、採石業、砂利採取業
  • 卸売業、小売業、一般旅客自動車運送業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業
  • 料理店業その他の飲食店業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶貸渡業、旅行業、宿泊業
  • こん包業、郵便業、損害保険代理業、情報通信業、駐車場業、不動産業、物品賃貸業、広告業
  • 学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業、映画業
  • 医療、福祉業、社会保険・社会福祉・介護事業、洗濯・理容・美容・浴場業
  • その他の生活関連サービス業、協同組合(他に分類されないもの)、他に分類されないサービス業

中小企業投資促進税制とは?

中小企業投資促進税制とは、「中小企業における生産性向上等」を図るため、一定の設備投資を行った場合に、「特別償却(30%)」または「税額控除(7%)」のいずれかの適用を選べる制度です。

また、生産性向上に貢献する設備については、「特別償却」または「税額控除」の「上乗せ措置(即時償却又は取得価額の10%の税額控除)」の適用を受けることができます。

中小企業投資促進税制の制度概要

中小企業投資促進税制の制度概要は、次の通りです。

適用対象者

制度が適用される対象者は、「青色申告書を提出する中小企業者等」です。
そして後述しますが、税制改正により「中小企業者等」に新たに「商店街振興組合」が追加されます。

適用期限

当初は適用期限が「2017年4月1日~2021年3月31日」でしたが、後述するように2年延長されます。

対象設備

制度の対象となる設備と要件は、下表のようになります。

設備 要件
機械装置 すべて(1台160万円以上)
器具備品、工具 ・一定の電子計算機(複数台計120万円以上)
・一定のデジタル複合機(1台120万円以上)
・一定の試験又は測定機器、測定工具・検査工具(1台30万円以上かつ複数台計120万円以上)
ソフトウエア 一定のソフトウェア(複数合計70万円以上)
普通貨物自動車 車両総重量3.5t以上
内航船舶 取得価額の75%が対象

指定事業

制度対象となる指定業種は、税制改正によって追加業種があるため、後述しています。

措置の内容

適用される措置は、次の通りです。

対象者 通常措置
特別償却
通常措置
税額控除
上乗せ措置
特別償却
上乗せ措置
税額控除
個人事業主
資本金3,000万円以下の法人
農業協同組合等
30% 7% 即時償却 10%
資本金3,000万円超1億円以下の法人 30% 適用なし 即時償却 7%

 

【令和3年度税制改正】中小企業経営強化税制の延長と変更点

次に令和3年(2021年)度税制改正における、中小企業経営強化税制の適用期限延長と変更点について解説します。

中小企業経営強化税制の延長

当初は「2021年3月31日まで」とされていた、中小企業経営強化税制の適用期限が、下記の2年延長されました。

  • 適用期限:2021年4月1日 ~ 2023年3月31日(2年間)

中小企業経営強化税制の変更点

前項の適用期限の延長のほか、令和3年(2021年)度税制改正では次の2点が変更されています。

【変更点1】計画認定手続を柔軟化

制度の利便性を向上させるため、適用の前提となる「計画認定手続」を柔軟化します。

詳細はまだ公表されていませんが、一例として、「工業会の証明書の取得と同時並行で、計画認定に係る審査を行うことにより、手続を迅速化」が挙げられています。

また財務省の資料では、「所得拡大促進税制の上乗せ要件に必要な計画の認定を不要とする」と紹介しています。

【変更点2】新たな類型として「D類型」を追加

これまでA~Cの3種類だった類型に、今回新たに「経営資源集約化設備(D類型)」が加わります。

現時点では、要件が「修正ROA又は有形固定資産回転率が一定以上上昇する設備」とだけ公表されています。

中小企業経営強化税制の延長の目的

令和3年(2021年)度税制改正で中小企業経営強化税制が延長された目的は、「中小企業者等における生産性の高い設備や IT 化等への設備投資を促進することで、中小企業者等の経営力の向上を図るため」とされています(経産省 要望書より)。

【令和3年度税制改正】中小企業投資促進税制の延長と変更点

記事の最後に、令和3年(2021年)度税制改正における、中小企業投資促進税制の適用期限延長と変更点について解説します。

中小企業投資促進税制の延長

当初は「2021年3月31日まで」とされていた、中小企業投資促進税制の適用期限が、下記の2年延長されました。

  • 適用期限:2021年4月1日 ~ 2023年3月31日(2年間)

中小企業投資促進税制の変更点

前項の適用期限の延長のほか、令和3年(2021年)度税制改正では次の点が変更されています。

【変更点】「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」を統合し対象者・業種を追加

別制度だった「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」を統合したことで、対象者と業種が追加されます。

出典:中小企業庁

下表の太字の箇所が、今回新たに追加となった対象者と業種です。

対象者 ・中小企業者等(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合、商店街振興組合等)
・従業員数1,000人以下の個人事業主
対象業種 製造業、建設業、農業、林業、漁業、水産養殖業、鉱業、卸売業、道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、ガス業、小売業、料理店業その他の飲食店業(料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブ その他これらに類する事業については生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る。)、一般旅客自
動車運送業、海洋運輸業及び沿海運輸業、内航船舶賃貸業、旅行業、こん包業、郵便業、通信業、損害保険代理業及びサービス業(映画業以外の娯楽業を除く)、不動産業、物品賃貸業
※性風俗関連特殊営業に該当するものは除く

中小企業投資促進税制の延長の目的

令和3年(2021年)度税制改正で中小企業投資促進税制が延長された目的は、「成長の底上げに向けて中小企業者等の設備投資を促進するため」とされています(経産省 要望書より)。

まとめ:中小企業経営強化税制・中小企業投資促進税制の上手な活用を

この記事では、中小企業経営強化税制と中小企業投資促進税制の、適用期限延長と制度の変更点について解説してきました。

中小企業経営強化税制では計画認定手続が柔軟化されるなど、より利用しやすい制度となるようです。
ぜひ記事の内容を参考に、中小企業経営強化税制・中小企業投資促進税制を上手に活用していきましょう。

中小企業経営強化税制・中小企業投資促進税制とは?

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