【事業再構築補助金】事業再構築の類型②「事業転換」の定義・該当要件・事例を解説

2021年7月2日に二次締め切りを控える「事業再構築補助金」。

申請には「事業再構築に取り組む」ことが要件となるため、「事業再構築の類型」をよく理解することが必要です。

そこでこの記事では、「事業再構築の類型」のひとつである「事業転換」の定義と該当要件、事例をわかりやすく解説していきます。

事業再構築補助金の申請を検討されている経営者の方は、ぜひご覧ください。

事業再構築補助金の「事業再構築の類型」とは?

事業再構築補助金の「事業再構築の類型」とは、支援の対象となる「事業再構築」の種類を指すもので、次の5つのことをいいます。

  1. 新分野展開:新たな製品等で新たな市場に進出する
  2. 事業転換:主な「事業」を転換する
  3. 業種転換:主な「業種」を転換する
  4. 業態転換:製造方法等を転換する
  5. 事業再編:事業再編を通じて新分野展開、事業転換、 業種転換または業態転換のいずれかを行う

上記5つの違いについては、こちらの記事でわかりやすく解説しています。

【事業再構築補助金】「事業再構築の類型」5つの違いを一覧表で解説!事例もご紹介

 

事業再構築補助金に申請するためには、「事業再構築に取り組む」ことが必要。
そのためには、上記の類型をよく理解することが重要です。

この記事では、次項から類型②「事業転換」についてくわしく解説していきます。

また、「事業再構築補助金」と「事業再構築」の詳細は、以下の公式サイトで確認できます。

事業再構築補助金 公式ウェブサイト
中小企業庁:事業再構築指針
中小企業庁:事業再構築指針の手引き

なお、事業再構築の制度の全体像について知りたい方は、以下の記事もお読みください。

【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説

【Q&A】最大1億円の「事業再構築補助金」について疑問に答えます

 

事業再構築の類型②「事業転換」の定義

ここからは、事業再構築の類型②「事業転換」について解説していきます。
まず定義は次のとおりです。

  • 事業転換の定義
    「事業転換」とは、中小企業等が新たな製品を製造し、または新たな商品もしくはサービスを提供することにより、「主たる業種」を変更することなく、「主たる事業」を変更することをいう

ここで「主たる業種」とは、直近決算期における売上高構成比率の最も高い事業が属する、「日本標準産業分類」に基づく大分類の産業のことです。

また「主たる事業」とは、直近決算期における売上高構成比率の最も高い事業が属する、「日本標準産業分類」に基づく中分類、小分類または細分類の産業を指します。
(中分類・小分類・細分類のどれで判定しても、問題ありません)

ちなみに「主たる業種」を変更する場合は、事業再構築の類型「業種転換」に該当します。

日本標準産業分類とは

日本標準産業分類」とは、「事業所(モノやサービスを生産・提供するところ)」を経済活動別に分類するために、総務省が定めている統計基準です。

分類は、次の4つのレベルにわかれます。

  1. 大分類:アルファベット
  2. 中分類:数字2桁
  3. 小分類:数字3桁
  4. 細分類:数字4桁
出典:事業再構築指針の手引き

そして「モノの生産」を行っている場合は、下記の内容によって「分類項目」がわかれます。

  1. 何を作っているか
  2. どのような生産技術で作っているか

同じく「サービスの提供」については、下記の内容で「分類項目」がわかれます。

  1. 誰に対して
  2. どのようなサービスを提供しているのか

各項目の説明や内容例示を参照して、自社の分類を確認してください。

また、自社の業種・事業をラクに確認したい場合は、こちらでキーワード検索を行うこともできます。

e-Stat:統計分類・用語の検索

事業再構築の類型②「事業転換」の該当要件

事業再構築の類型②「事業転換」に該当するためには、次の要件すべてを満たす必要があります。

  1. 製品等の新規性要件:事業で製造する製品や提供する商品・サービスが、新規性を有するものであること
  2. 市場の新規性要件:事業で製造する製品や提供する商品・サービスの属する市場が、新規性を有するものであること
  3. 売上高構成比要件:新たに製造する製品や新たに提供する商品・サービスを含む事業が、売上高構成比の最も高い事業となること

ここでいう「新規性」とは、事業再構築に取り組む中小企業にとっての新規性であり、「日本初・世界初」といった「世の中における新規性」のことではありません。

各要件について、以下でくわしく解説していきます。

[事業転換の該当要件1]製品等の新規性要件

「製品等の新規性要件」を満たすためには、以下の3点すべてを事業計画書で示すことが必要です。

〈製品等の新規性要件①〉過去に製造等した実績がないこと

過去に製造・提供した実績がないものにチャレンジする」ことを、事業計画書で示すことが必要です。

また過去に試作だけを行って、販売や売上実績がないケースで、追加の改善を行って事業再構築を図る場合は「過去に製造等した実績がない場合」に含まれます(よくあるお問合せより)。

「過去に製造等した実績がないこと」を満たさないケース

過去に製造していた製品を「再製造」する場合は、要件を満たしません。

例えば「以前製造していた自動車部品と同じ部品を、再び製造する場合」が該当します。

〈製品等の新規性要件②〉製造等に用いる主要な設備を変更すること

「新たな製品や商品・サービスを製造、提供するために、主要な設備の変更が必要」であることを事業計画書で示します。

また、ここでいう「設備」とは、設備、装置、プログラム(データを含む)、施設等を指します。

「製造等に用いる主要な設備を変更すること」を満たさないケース

「新製品を既存の設備でも製造できる」なら、要件を満たしません。

例えば「これまでパウンドケーキ製造に使用していたオーブン機器と同じ機械を、新商品である焼きプリンの製造に使用する場合」が該当します。

また新たな投資を行わず、ただ単に「商品のラインナップを増やす」ようなケースも、要件を満たしません。

〈製品等の新規性要件③〉定量的に性能又は効能が異なること(定量的に計測できる場合のみ)

製品・商品などの性能や効能を「定量的に計測できる場合」は、「定量的な性能・効能が異なる」ことを、事業計画書で示す必要があります。

例えば、「既存製品と比べ、新製品の強度(耐久性、軽さ、加工性、精度、速度、容量など)が◯%向上する」といったことを記載してください。

また「定量的に計測できない場合」は、その旨を事業計画書で示すことが必要です。

「定量的に性能又は効能が異なること」を満たさないケース

性能・効能が定量的に計測できる場合で、既存の製品と新製品の性能・効能に差が認められないときは、要件を満たしません。

例えば「以前から製造していた半導体と、性能に差のない半導体を新たに製造するために設備を導入する場合」が該当します。

その他の「製品等の新規性要件」を満たさないケース

ここまでご紹介したほか、次のケースも「製品等の新規性要件」を満たしません。

  • 既存の製品等の製造量等を増やす
  • 事業者の事業実態に照らして、容易に製造等が可能な新製品等を製造等する
  • 既存の製品等に「容易な改変」を加えた新製品等を製造等する場合
  • 既存の製品等を「単純に組み合わせただけ」の新製品等を製造等する

[事業転換の該当要件2]市場の新規性要件

「市場の新規性要件」を満たすためには、「既存製品等と新製品等の代替性が低いこと」を事業計画で示す必要があります。

〈市場の新規性要件①〉既存製品等と新製品等の代替性が低いこと

代替性が低いこと」とは、次のようなことを表します。

  • 新製品を販売しても、既存製品の需要が置き換わらない
  • そのため、既存製品の販売数は大きく減少しない
  • むしろ相乗効果となって増大する

例えば、日本料理店が新たに「オンラインの料理教室を始める場合」なら、日本料理店の売上は変わらず、むしろ宣伝となって相乗効果になると考えられることから、「代替性は低い」と考えられます。

「既存製品等と新製品等の代替性が低いこと」を満たさないケース

「新製品が対象とする市場が同一のケース」は、要件を満たしません。
これは、既存製品の需要が代替され、売上が減少する可能性が高いためです。

例えば、アイスクリームを販売していた事業者が、新たにかき氷を販売する場合は、同一の市場のためアイスクリームの売上の減少が考えられます。

また「既存の製品の市場の一部のみを対象とするケース」も、要件を満たしません。

例えば、アイスクリームを販売していた事業者が、バニラアイスクリームに特化して提供する場合が該当します。

[事業転換の該当要件3]売上高構成比要件

「売上高構成比要件」を満たすためには、次の事業計画を策定することが必要です。

  • 3~5年間の事業計画期間終了後、「新たな製品等の属する事業」が売上高構成比の最も高い事業となる

事業再構築の類型②「事業転換」の事例と要件を満たす考え方

記事の最後に、事業再構築の類型②「事業転換」の事例と、前項でご紹介した要件を満たす考え方をご紹介します。

事業再構築の類型②「事業転換」の事例紹介

事業再構築の類型②「事業転換」の要件を満たす事例として、次のものが挙げられています。

製造業の場合

プレス加工用金型を製造している下請事業者が、業績不振を打破するため、これまで培った金属 加工技術を用いて、新たに産業用ロボット製造業を開始し、5年間の事業計画期間終了時点において、産業用ロボット製造業の売上高構成比が、日本標準産業分類の細分類ベースで最も高い事業となる計画を策定している場合

出典:事業再構築指針の手引き

「事業転換」の要件を満たす考え方

次に、前項の事例をもとに、要件1~3を満たす考え方をご紹介します。

まず「日本標準産業分類」に基づく産業を確認すると、次の通り。

  • プレス加工用金型の製造
    【大分類】E製造業
    ⇒【中分類】生産用機械器具製造業
    ⇒【小分類】269その他の生産用機械・同部分品製造業
    【細分類】2691金属用金型・同部分品・附属品製造業
  • 産業用ロボット製造業
    【大分類】E製造業
    ⇒【中分類】生産用機械器具製造業
    ⇒【小分類】269その他の生産用機械・同部分品製造業
    【細分類】2694ロボット製造業

「主たる業種」を変更することなく、「主たる事業」が細分類ベースで転換されていることがわかります。

該当要件1「製品等の新規性要件」を満たす考え方

①過去に製造等した実績がないこと

新たに製造する産業用ロボットが「これまでに製造した実績のない部品」であれば、要件を満たします。

②製造等に用いる主要な設備を変更すること

プレス加工用金型専用の生産設備とは別に、産業用ロボットを製造する新たな生産設備が必要であり、その設備を導入する場合には要件を満たします。

プレス加工用金型と同じ生産設備を、産業用ロボットでも利用する場合には、要件を満たしません。

③定量的に性能または効能が異なること

新しく製造する産業用ロボットと、これまで製造していたプレス加工用金型が異なる製品であれば「強度や軽さなど、定量的に性能・効能を比較することが難しい」ことを事業計画で示せば、要件を満たします。

該当要件2「市場の新規性要件」を満たす考え方

「プレス加工用金型と産業用ロボットでは用途が違うため、産業用ロボットを新たに製造・販売しても、プレス加工用金型の需要が代替され売上が減少することは見込まれない」ことを説明すれば、要件を満たします。

該当要件3「売上高構成比要件」を満たす考え方

上記の通り、「金属用金型製造業」と「ロボット製造業」は、日本標準産業分類の細分類ベースで別分類です。

そのため「3~5年間の事業計画期間終了時に、ロボット製造業の売上構成比が細分類ベースで最も高くなる計画」を策定していれば、要件を満たします。

まとめ:事業再構築の類型②「事業転換」を把握して申請準備を

この記事では、「事業再構築の類型」のひとつである「事業転換」の定義と該当要件、事例までわかりやすく解説してきました。

補助金の採択につなげるために、「事業転換」の定義や該当要件をよく把握したうえで、申請準備を進めましょう。

また、事業再構築補助金では、認定支援機関によるサポートを受けて応募する必要があります。

経営者コネクトでも、認定支援機関による申請サポートを行っています。
無料相談も行っていますので、ご関心ある方は以下のページもご覧ください。

また、数ある補助金・助成金について知りたい方は、以下の記事もお読みください。

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