【事業再構築補助金の公募要領解説①】審査項目と加点項目のポイントを紹介

2021年3月26日に、いよいよ第1回公募が開始された「事業再構築補助金」。
採択されるために、まずは公募要領の各項目をよく理解することが重要です。

そこでこの記事では、「事業再構築補助金の公募要領解説」第1回として、「審査項目と加点項目のポイント」について、わかりやすくご紹介していきます。

事業再構築補助金への申請を検討されている経営者の方は、ぜひご覧ください。

補助金制度における「審査項目」と「加点項目」

補助金制度は、多くの助成金制度とは違い「申請したら必ずもらえる」わけではありません。
補助の有無や金額は、事前に行う「審査」と事後に行う「検査」によって決まり、まずは審査に合格(採択)しなくてはなりません。

この審査を行う基準となるのが「審査項目」です。
「審査項目を満たす申請書」を作成することが、補助金の採択につながります。

また「加点項目」とは、必須ではないものの、「実施することで採択される可能性が高まる項目」をいいます。
「どの程度の点数が加算されるか」は公表されていませんが、できるだけ多くの「加点項目」を実施すれば、それだけ補助金の採択につながりやすくなります。

「審査項目」と「加点項目」は公募要領に記載されていますので、内容をよく理解して、補助金の採択を目指しましょう。

なお、事業再構築の制度の全体像について知りたい方は、以下の記事もお読みください。

【事業再構築補助金まとめ】制度概要や申請できる企業、申請方法、採択結果などすべて解説

【Q&A】最大1億円の「事業再構築補助金」について疑問に答えます

【事業再構築補助金の公募要領解説】審査項目のポイント

事業再構築補助金の審査項目には、大きく分けると次の4点があります。

  1. 補助対象事業としての適格性
  2. 事業化点
  3. 再構築点
  4. 政策点

この審査項目を満たす内容を、「事業計画書にわかりやすく記載する」ことが重要です。
なお公募要領では、事業計画書は審査項目を熟読したうえで、次の4項目について「A4サイズで計15ページ以内で作成」することを勧めています(23~24ページより)。

  • 審査項目(1):補助事業の具体的取組内容
  • 審査項目(2):将来の展望(事業化に向けて想定している市場及び期待される効果)
  • 審査項目(3):本事業で取得する主な資産
  • 審査項目(4):収益計画

ここからは、事業再構築補助金の各審査項目のポイントについて、くわしく解説していきます。

審査項目(1)補助対象事業としての適格性

事業再構築補助金の公募要領では、審査項目「(1)補助対象事業としての適格性」として、次の2点を挙げています。

適格性①:「補助対象事業の要件」を満たすか

「補助対象事業の要件」は、公募要領10~14ページに記載されており、次の事業類型ごとに要件が決められています。

  1. 通常枠
  2. 卒業枠
  3. グローバルV字回復枠
  4. 緊急事態宣言特別枠

これは「申請要件」となるため、満たすことが必須です。
満たさないと判断されれば「審査されずに不採択」となる可能性もあります。
申請の第一歩と考え、自社が応募を検討する事業類型の要件をよく理解しましょう。

適格性②:適格性補助事業終了後3~5年計画で「付加価値額」年率平均3.0%(【グローバル V 字回復枠】については 5.0%)以上の増加等を達成する取組みであるか

前項①と同様に、こちらも「申請要件」のため、達成を見込める事業計画を必ず策定しなければなりません。
ただし「付加価値額」はただ数字を入れればいいわけではなく、その算出根拠を記載することが必要です。

なお「付加価値額」とは、「営業利益・人件費・減価償却費」を足したものをいいますが、「社員の解雇によって付加価値額要件を達成させるような事業」は認められませんので、注意してください。

審査項目(2)事業化点

事業再構築補助金の公募要領では、審査項目「(2)事業化点」として次の4点を挙げています。

事業化点①:体制・財務状況・資金調達

応募要領には1つ目の事業化点項目として、下記の記載があります。

本事業の目的に沿った事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。

「補助事業の実現可能性」を判定する項目です。
あまりにも「自社の現状」とかけ離れた事業計画を策定しないよう、気をつけてください。

なお申請時には、直近2年間の下記書類を添付する必要があるため、財務状況を偽った事業計画を出すことはできません。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書(特定非営利活動法人は活動計算書)
  • 製造原価報告書
  • 販売管理費明細
  • 個別注記表

事業化点②:市場理解

次に「事業の市場やユーザー」などを判定する項目として、下記の記載があります。

事業化に向けて、競合他社の動向を把握すること等を通じて市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。市場ニーズの有無を検証できているか。

経済産業省では、市場動向等を簡易に把握できる統計分析ツール「グラレスタ」を2021年3月に公開しています。
必要に応じて活用してみましょう。

ミラサポ Plus:統計グラフ化ツール(グラレスタ) | トップ
「グラレスタ」紹介動画

事業化点③:収益性・スケジュール・課題解決方法

「スケジュールと課題解決方法」を判定する項目です。

補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か。補助事業の課題が明確になっており、その課題の解決方法が明確かつ妥当か。

以下のように記載されています。

スケジュールについては、公募要領の「10.事業計画作成における注意事項 1:補助事業の具体的取組内容」に次のような記載があります。

事業実施期間内に投資する建物の建設・改修等の予定、機械装置等の型番、取得時期や技術の導入や専門家の助言、研修等の時期についても、可能な限り詳細なスケジュールを記載してください。

事業再構築で実施する内容と、上記に記載された各項目を細かく洗い出し、その時期を明確にしていけば、妥当なスケジュールが組み上がると考えられます。

また「課題解決方法」は、「明確かつ妥当」な内容を、わかりやすいよう課題の項目別に、課題に対応する解決策(取組内容)を箇条書きで書く方法がおすすめです。
解決策は具体的に書き、写真や図表を入れることで、審査員にも理解しやすい内容となります。

事業化点④:事業の効果・収益性

「事業の収益性」を判定する項目です。
具体的には、以下の記載があります。

補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性等)が高いか。その際、現在の自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されること等により、効果的な取組となっているか。

「既存事業とのシナジー効果」と記載されていますが、事業再構築で取り組む事業は、必ずしも既存事業と関連している必要はありません。
とはいえ、その企業の強みを生かし、効果的で収益性の高い事業となることが見込まれれば、加点要素となります。

審査項目(3)再構築点

事業再構築補助金の公募要領では、審査項目「(3)再構築点」として次の4点を挙げています。

再構築点①:事業再構築指針に沿った取組みであるか。また、全く異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか。

「事業再構築指針」とは、事業再構築補助金の「事業再構築」の定義等について明らかにしたもの。
次の5つの類型のいずれかに該当する事業計画を策定することは、「補助対象要件」のひとつです。

  1. 新分野展開
  2. 事業転換
  3. 業種転換
  4. 業態転換
  5. 事業再編

(参考)
事業再構築指針
事業再構築指針の手引き

また審査項目の後半部分は、「思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援する」という、事業再構築補助金事業の目的に合致。
そのため「審査項目の配点」は、高くなるのではないかと考えられます。

再構築点②:既存事業における売上の減少が著しいなど、新型コロナウイルスの影響で深刻な被害が生じており、事業再構築を行う必要性や緊要性が高いか。

「新型コロナウイルスの影響による売上減少」は、前項同様「補助対象要件」のひとつ。
公募要領には、具体的な条件が次のように記載されており、必須の要件となっています。

申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年または2020年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。

再構築点③:市場ニーズや自社の強みを踏まえ、「選択と集中」を戦略的に組み合わせ、リソースの最適化を図る取組であるか。

「リソースの最適化を図る取組」を行えば、万が一不採択となった場合でも、事業主にそのノウハウは残ります。
その後の事業活動に役立つ手法であるため、特に小規模事業者や個人事業主といった「限られたリソースで競争する」事業主の方には、ぜひ取り組んで頂きたい項目です。

また、「市場ニーズや自社の強みを踏まえた」ものとしては、次のような事業再構築例が当てはまると考えます(リーフレットより)。

  • 食品製造業
    和菓子製造・販売 ➡ 和菓子の製造過程で生成される成分を活用し、新たに化粧品の製造・販売を開始
  • 製造業
    航空機部品製造 ➡ ロボット関連部品・医療機器部品製造の事業を新規に立上げ

再構築点④:先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域のイノベーションに貢献し得る事業か。

次のような事業再構築例が、この判定項目に当てはまると考えます(リーフレットより)。

  • 製造業
    半導体製造装置部品製造 ➡ 半導体製造装置の技術を応用した洋上風力設備の部品製造を新たに開始
  • 飲食業
    弁当販売 ➡ 新規に高齢者向けの食事宅配事業を開始。地域の 高齢化へのニーズに対応

審査項目(4)政策点

事業再構築補助金の公募要領では、審査項目「(4)政策点」として次の5点を挙げています。

政策点①:先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用等を通じて、我が国の経済成長を牽引し得るか。

政策点②:新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えてV字回復を達成するために有効な投資内容となっているか。

政策点③:ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。

政策点④:地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより雇用の創出や地域の経済成長を牽引する事業となることが期待できるか。

政策点⑤:異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。また、異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。

すべての事業があてはまる内容ではありませんが、上記項目に該当する場合には、その内容をしっかり事業計画書に記載しましょう。

なお上記の審査項目は、ものづくり補助金の「審査項目(4)政策点」とほぼ同内容です。

ものづくり補助金公募要領 19ページ参照

以前、ものづくり補助金申請を行った事業主の方は、その際に意識した「事業計画書作りの審査項目」も参考にできると考えます。

ものづくり補助金については、以下の記事もよく読まれていますので参考にされてください。

【ものづくり補助金まとめ】制度概要や申請方法、採択結果などわかりやすく解説【2021年度版】

【事業再構築補助金の公募要領解説】加点項目のポイント

事業再構築補助金の加点項目は、「令和3年の国による緊急事態宣言の影響を受けた事業者に対する加点」で、次の2点があります。

  1. 令和3年の国による緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、2021 年 1 月~3 月のいずれかの月の売上高が対前年(又は対前々年)同月比で 30%以上減少していること。
  2. 上記①の条件を満たした上で、2021 年 1 月~3 月のいずれかの月の固定費(家賃+人件費+光熱費等の固定契約料)が同期間に受給した協力金の額を上回ること。

そして加点項目は、上記を証明する以下の添付書類を提出し、「要件に合致することが確認できた場合」にのみ加点されます。

加点①を証明する添付書類

加点①を証明する添付書類として、次の書類が必要です。

  • a.令和3年の国による緊急事態宣言の影響を受けたことの宣誓書(エクセルPDF見本
  • b.売上高減少に係る証明書類

なお「緊急事態宣言特別枠」に申請する場合は、書類が重複するため、上記a・bは不要です。

また上記bの証明書類は、具体的には次の通りで、法人・個人事業主ともに(1)~(5)まですべてが必要となります。

①法人の場合

  • (1)申請に用いる「任意の3か月」の、比較対象となるコロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3か月の売上が分かる年度の「確定申告書別表一」の控え
  • (2)上記(1)の「確定申告書」と同年度の「法人事業概況説明書」の控え
  • (3)e-Taxで申告している場合は「受信通知」
  • (4)申請に用いる「任意の3か月(2020年又は2021年)」の売上がわかる「確定申告書別表一」の控え
  • (5)上記(4)の「確定申告書」と同年度の「法人事業概況説明書」の控え

②個人事業主の場合

  • (1)申請に用いる「任意の3か月」の、比較対象となるコロナ以前(2019年または2020年1~3月)の同3か月の売上が分かる年度の「確定申告書第一表」の控え
  • (2)上記(1)の「確定申告書」と同年度の月別売上の記入のある「所得税青色申告決算書」の控えがある場合は、その控え(白色申告の場合は、対象月の月間売上がわかる「売上台帳」、「帳面」、「その他の確定申告の基礎となる書類」を提出する)
  • (3)e-Taxで申告している場合は「受信通知」
  • (4)申請に用いる「任意の3か月(2020年又は2021年)」の売上がわかる「確定申告書第一表」の控え
  • (5)上記(4)の「確定申告書」と同年度の月別売上の記入のある「所得税青色申告決算書」の控えがある場合は、その控え(白色申告の場合は、対象月の月間売上がわかる「売上台帳」、「帳面」、「その他の確定申告の基礎となる書類」を提出する)

加点②を証明する添付書類

加点②を証明する添付書類として、次の書類が必要です。

  • c.固定費に係る証明書
  • d.協力金の受給に係る証明書

なお「緊急事態宣言特別枠」に申請する場合で、上記c・dを提出する方(特別枠では任意提出)は、書類が重複するためこちらでは不要です。

まとめ:審査項目と加点項目のポイントをつかんで申請準備を

この記事では、「事業再構築補助金の公募要領解説」第1回として、審査項目と加点項目のポイントについて、わかりやすくご紹介しました。

特に審査項目を理解することは、補助金の採択に直結します。
ぜひ記事を参考に、審査項目と加点項目のポイントをつかんで、申請準備を進めましょう。

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