「ストレスチェック助成金」とは?対象や要件など令和3(2021)年度の制度概要も解説

厚生労働省の令和2年労働安全衛生調査によれば、過去1年に「メンタルヘルス不調で1か月以上休業、または退職した社員がいる」と回答した企業は、全体の9.2%。

およそ1割で「休業・退職者」が発生しており、今や企業におけるメンタルヘルス対策は欠かせないものとなっています。
このような状況のなか、小規模事業場でのストレスチェック実施を支援してくれる制度が「ストレスチェック助成金」です。

この記事では、「ストレスチェック助成金」の基本情報や令和3年度(2021年度)の制度概要、「ストレスチェック制度」の導入サポート体制まで解説します。

「社員のメンタルヘルス不調を防ぎたい」と考える経営者の方は、ぜひご覧ください。

「ストレスチェック助成金」とは?

「ストレスチェック助成金」とは、「労働者の健康管理の促進」を目的に、ストレスチェックを実施し、医師による面接指導等を実施した小規模な事業場に対して助成を行う制度です。

平成27年度(2015年度)に「ストレスチェック制度」がつくられましたが、実施義務があるのは「社員が50人以上の事業場」
一方で「50人未満の事業場」については現在も努力義務です。

そこで「50人未満の事業場」でも積極的にストレスチェックが行われるようにと、平成27年度(2015年度)に「ストレスチェック助成金」が開始されました。

年度ごとに申請時期や書面などがあり、令和3年度(2021年度)についても後述のとおり決められています。
必ず年度ごとの、正しいルールや申請書を使用した申請を行ないましょう。

また「ストレスチェック助成金」は、独立行政法人 労働者健康安全機構が行う「産業保健関係助成金」のひとつで、ほかには以下のような助成金があります。

  1. 職場環境改善計画助成金:ストレスチェックの集団分析の結果を活用し、職場環境の改善を行う
  2. 心の健康づくり計画助成金:心の健康づくり計画(ストレスチェック実施計画を含む)を作成し、計画に基づきメンタルヘルス対策を実施する
  3. 小規模事業場産業医活動助成金:産業医・保健師と契約し、産業保健活動を行う
  4. 治療と仕事の両立支援助成金:傷病の特性に応じた治療と仕事を両立するための制度の導入または活用を行う
  5. 副業・兼業労働者の健康診断助成金:副業・兼業労働者に対して一般健康診断を実施する

「ストレスチェック制度」とは?

「ストレスチェック制度」とは、以下の点などを目的に、社員に対して医師や保健師などによるストレスチェック(調査票による確認など)と面接指導を行う制度です。

  1. 社員のメンタルヘルス不調の未然防止
  2. 社員自身のストレスへの気づきを促す
  3. ストレスの原因となる職場環境の改善

平成26年(2014年)6月に労働安全衛生法が改正されたことで設けられ、平成27年(2015年)12月から開始。

社員が50人以上の事業場では、年に1回のストレスチェックの実施が事業者に義務づけられました。

「ストレスチェック制度」についてくわしくは、こちらのサイトをご覧ください。

(参考)
厚生労働省:ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等
厚生労働省:労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル

令和3(2021)年度「ストレスチェック助成金」の制度概要

次に、令和3年度(2021年度)「ストレスチェック助成金」の制度概要をご紹介します。

[令和3年度 制度概要1]助成対象の取り組みとその要件

令和3年度(2021年度)「ストレスチェック助成金」の対象となる取り組みは次の2点で、それぞれ取り組みの要件を満たす必要があります。

対象となる取り組み 取り組みの要件
(1)ストレスチェックの実施 ①ストレスチェックの実施者が決まっている
(2)ストレスチェックに係る医師による活動 ②事業者が医師と契約を締結し、「ストレスチェックに係る医師による活動」の全部、または一部を行わせる体制が整備されている
③ストレスチェックの実施および面接指導等を行う者が、自社の使用者・労働者以外の者である

なお、上記「(2)ストレスチェックに係る医師による活動」とは、医師による次の活動を指します。

  • ストレスチェック実施後に、面接指導を実施すること
  • 面接指導の結果について、事業主に意見陳述を行うこと

また要件②で締結する「ストレスチェックに係る医師による活動」の契約には、次の事項がすべてふくまれることが必要です。

  • ストレスチェック後に、面接指導等を実施することが含まれている
  • ストレスチェックに係る医師による、活動1回あたりの金額が明記されている
  • 実施医師の氏名が明記されている
  • 申請事業場が契約を締結している。または本社等が管轄事業場の契約をまとめて締結している場合は、申請事業場が契約対象事業場として明記されている

[令和3年度 制度概要2]対象となる事業場の要件

助成金の対象となるのは、次の3つの要件をすべて満たした事業場です。

  1. 労働者を雇用している法人・個人事業主である
  2. 労働保険の適用事業場である
  3. 常時使用する社員が、派遣労働者を含めて50人未満である

なお上記②については、厚生労働省のウェブページ「労働保険適用事業場検索」で該当する事業場が、適用事業場とみなされます。

[令和3年度 制度概要3]助成対象費用と助成金額

助成金の対象費用とその助成金額は、下表のとおりです。

助成対象費用 助成額(上限額)
(1)ストレスチェックの実施費用
年1回のストレスチェックを実施した場合に、実施人数分の費用が助成される
社員1名につき500円(税込)
(2)ストレスチェックに係る医師による活動費用
ストレスチェックに係る医師による活動について、実施回数分(上限3回)の費用が助成される
1事業場あたり1回の活動につき21,500円(税込)
【上限3回】

なお500円と21,500円は、対象(1)と(2)それぞれの上限額となるため、実費額が上限額を下回る場合には、税込みの実費額が支給されます。

[令和3年度 制度概要4]実施期間と申請期間

令和3年度(2021年度)の「ストレスチェック」と「医師による活動」の実施時期は、次のようになります。

  • 実施時期令和3年(2021年)4月1日~令和4年(2022)3月31日

様式第2号の「ストレスチェック実施日」と、様式第3号の「2 ストレスチェックに係る医師による活動実施状況」の実施日は、上記の期間中であることが必要となります。

また助成金の申請期間は下記のとおりです。

  • 申請期間令和3年(2021年)5月18日~令和4年(2022)6月30日(消印有効)

ただし、手引で「申請期間中でも助成金支給申請の受付を終了することがあります」と案内しているため、できるだけ早めの実施・申請をおすすめします。

 

[令和3年度 制度概要5]申請手続きの流れ

助成金の申請手続きの流れは、以下のようになります。

流れ①:ストレスチェックの実施について審議

ストレスチェックの実施について、医師からの助言、労使での審議、社員への説明や情報提供などを行います。

流れ②:「ストレスチェックに係る医師による活動」の契約締結

事業者が医師と「ストレスチェックに係る医師による活動」の全部、または一部を行わせる契約を締結します。

この契約に、上記「制度概要1」でご紹介した「契約にふくまれるべき事項」がふくまれていることを確認してください。

流れ③:ストレスチェックの実施

医師・保健師などによるストレスチェックを実施し、結果を社員に通知します。

実施後、事業者がストレスチェック実施者に対して支払いを行ない、領収書を受領。

そしてストレスチェック実施者(医師・保健師など)に「ストレスチェック実施報告書(様式第2号または2-2号)」の作成を依頼してください。

流れ④:ストレスチェックに係る面接指導などの実施

ストレスチェック実施後、申し出た社員に対して医師が面接指導を行います。
実施後、事業者が医師に対して支払いを行ない、領収書を受領。

そして医師に「ストレスチェックに係る医師による活動報告書(様式第3号)」の作成を依頼します。

流れ⑤:ストレスチェック助成金支給申請

事業者は次項で紹介する書類をそろえ、「ストレスチェック実施」と「ストレスチェックに係る医師による活動」の費用について、助成金の支給申請を行います。

流れ⑥:助成金支給決定通知の受取、助成金受領

申請書類について、労働者健康安全機構にて審査を実施。
内容に問題がなければ、事業者に「助成金支給決定通知書(様式第6号)」が届き、申請書に記載の金融機関の口座に助成金が支払われます。

内容が適当でないときは、事業者に「助成金不支給決定通知書(様式第7号)」が送付。

なお、審査から支給決定・振込みまで短い場合で2~3 か月、長い場合では6か月程度かかります。
特に1月~3月までは申請が集中するとのことです。

流れ⑦:助成金に係る証拠書類等の保管

事業者は、ストレスチェックの実施者と医師への支払について記録し、領収書その他「支出の事実を明らかにする証拠書類」をそろえておく必要があります。

またそれらの書類は、助成金を受給した翌年から起算して5年間保管しなくてはなりません。

[令和3年度 制度概要6]申請・提出書類と提出先

助成金の申請・提出書類は次のとおりです。

  1. 「ストレスチェック助成金支給申請書」(様式第1号)
  2. 医師との契約書(写)
  3. 医師であることを証明する書類(医師免許証等)(写)
  4. ストレスチェック実施者の要件を備えていることを証明する書類(写)【該当者のみ】
  5. 「ストレスチェック実施報告書」(様式第2号)
  6. 「ストレスチェックに係る医師による活動報告書」(様式第3号)【該当事業場のみ】
  7. ストレスチェック実施者へ支払った費用の領収書(写)
  8. 医師へ支払った費用の領収書(写)【該当事業場のみ】
  9. 労働保険概算・確定保険料申告書等(写)
  10. 労働保険料一括納付に係る証明書【該当事業場のみ】
  11. 振込先の通帳(写)など(振込先の名義、支店名、口座番号が確認できるもの)
  12. 「支給要件確認申立書」(様式第4号)
  13. 「ストレスチェック助成金支給申請チェックリスト 兼 同意書」(様式第5号)
  14. 事業場宛ての返信用封筒(長形3号封筒に84円切手貼付)

以下の条件を満たしていれば、本社が管轄事業場の申請をまとめて行う「本社等一括契約による申請」が可能です。

  • 本社等が、管轄する事業場の「ストレスチェックに係る医師による活動」の契約をまとめて締結している
  • 管轄事業場の助成金の振込口座が、申請する本社等の口座である

ただし「本社等一括契約による申請」を行う場合には上記の申請・提出書類の一部を、下記に変更して提出してください。

申請書作成時の注意点

申請書類の記載漏れ、記載誤り、提出書類の不足などがあると、審査に時間がかかってしまいます。

申請書類への記入の際には「助成金の手引」をよく読み込み、「記載漏れ」や「記載誤り」がないことを確認してください。

また申請書の送付前には、必ず「助成金支給申請チェックリスト兼同意書」で自己点検を行ないましょう。

申請書の提出先

申請書類の提出先はこちらです。

  • 独立行政法人労働者健康安全機構
    勤労者医療・産業保健部 産業保健業務指導課 宛て
  • 〒211-0021 神奈川県川崎市中原区木月住吉町1番1号 事務管理棟
  • TEL:0570-783046、FAX:044-411-5531

「スレスチェック制度」の導入サポート体制

労働者健康安全機構では「ストレスチェック助成金」のほかにも、メンタルヘルス対策としてさまざまな活動を行っています。
そこで記事の最後に、労働者健康安全機構が実施する「ストレスチェック制度」の導入サポート体制をご紹介します。

ストレスチェック制度サポートダイヤル

医師や保健師などのストレスチェック実施者や事業主、衛生管理者等のストレスチェック制度担当者などからの「ストレスチェック制度の実施方法」といった専門的な相談に対応する電話相談窓口が開設されています。

  • <電話番号>全国統一ナビダイヤル:0570 − 031050
  • <開設時間>平日10時~17時(土曜、日曜、祝日、12/29~1/3 は除く)

ストレスチェック制度実施のための研修

労働者健康安全機構が全国47都道府県に設置する産業保健総合支援センター(さんぽセンター)では、次の3種類の研修会を随時開催しています。

  1. 産業医等の実施者向け
  2. 衛生管理者等制度担当者向け
  3. 事業者向け

ただしコロナ禍のため、研修の中止やオンライン開催など変更されている場合もあるため、研修スケジュールなどは各産業保健総合支援センターのホームページでご確認ください。

労働者健康安全機構:産業保健総合支援センター

個別訪問による支援

医師や保健師、労働衛生工学の専門家など、メンタルヘルス対策の専門家が事業場を個別訪問して、「ストレスチェック制度導入」の各事業場にあった具体的なアドバイスをします。

また管理監督者を対象に、ストレスチェック制度を含めた「メンタルヘルス教育」のほか、作業環境管理、作業管理などの健康管理の状況を踏まえた助言や指導も実施。

個別訪問の詳細については、最寄りの産業保健総合支援センターへお問い合わせください。

労働者健康安全機構:産業保健総合支援センター

まとめ:「ストレスチェック助成金」で社員の不調防止を

この記事では、「ストレスチェック助成金」の基本情報や令和3年度(2021年度)の制度概要、「ストレスチェック制度」の導入サポート体制まで解説しました。

ぜひ記事を参考に、「ストレスチェック助成金」を活用し、社員のメンタルヘルス不調の防止を心がけましょう。

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