「金融機関の融資審査に通らなかった…」というとき、その理由を金融機関に聞いても、正直に教えてくれることはまずありません。
そのため経営者の方は「ほかの金融機関に融資を申し込んでも、また審査に落ちるのでは…」と不安になりがちです。
そこでこの記事では、金融機関の融資審査で不利になることを解説し、融資の疑問も解消していきます。
「融資の審査を何とかして通りたい」という経営者の方は、ぜひご覧ください。
金融機関の融資審査で不利になることとは?
まずは、金融機関の融資審査で不利になることをご紹介します。
〈不利になること①〉返済のための「具体的な計画」を立てていない
金融機関の融資審査で不利になること、1点目は「返済のための「具体的な計画」を立てていない」です。
融資において銀行側がまず考えるのは「融資した資金が確実に回収できるかどうか」。
そのため「融資はどこからどのように返済されるのか(返済財源、返済方法)」が、審査における最も重要なポイントです。
業績が良い場合は「決算書」などでアピール可能ですが、業績がイマイチならば、事業計画書や資金繰り予定表などを作成して、問題なく返済できることを証明しなければなりません。
融資審査では、「具体的な計画」がなければ話は進みません。
どのように売上を立て、どのように利益を上げるのか、といった「具体的な計画」を立て、書類に落とし込んで行きましょう。
「事業計画書」と「資金繰り表」についてくわしくは、こちらの記事をご覧ください。
・記事「金融機関からの融資を受けやすい事業計画書とは?書き方のポイントや作成代行も解説」
・記事「資金繰り表は中小企業にも必要!作り方は簡単、資金繰りの改善方法も紹介!」
〈不利になること②〉返済計画に根拠がない
金融機関の融資審査で不利になること、2点目は「返済計画に根拠がない」です。
前項は「返済の計画がない」でしたが、計画があったとしても、そこに「根拠」がなければ意味がありません。
たとえ事業計画書に「来年度は売上が120%となります」と記載しても、「一体なぜ120%となるのか」、「その根拠はどこにあるのか」という裏付けがなければ、その計画は「絵に描いた餅」に過ぎないのです。
逆に言うと、金融機関が「少し難しいのでは?」という計画であっても、適切な根拠が示されていれば納得してもらえます。
事業計画書などの資料を作成したら、その資料内で「なぜ増加(減少)するのか」といった根拠となる理由を、【補足欄】などを作って記載しておきましょう。
また金融機関から提出依頼がない場合でも、計画書の説明に必要であれば、次のような資料を添付してください。
計画の明確な根拠となるとともに、金融機関側の担当者の理解が進みます。
- 資金繰り表
- 市場調査の報告書
- 損益計算書
- 事業のリーフレット
- 必要な写真
なお「根拠となる資料を、どのように作ればよいのかわからない」という場合は、融資コンサルを利用するという方法も。
「融資コンサルの選び方やメリット・デメリット」については、記事「失敗しない融資コンサルの選び方とは?メリット・デメリット、手数料の相場も解説します」でくわしくご紹介しています。
〈不利になること③〉依頼された書類・資料を提出しない
金融機関の融資審査で不利になること、3点目は「依頼された書類・資料を提出しない」です。
融資の審査は、金融機関の融資担当者が「稟議書」を作成するところから始まります。
「稟議書」には「返済財源、返済方法、資金使途、融資金額、保全」などが記載されますが、そのためには決算書などの書類が必要。
融資担当者に書類が提出されていなければ、「稟議書」は作成できません。
つまり融資審査のスタートにも立てないのです。
融資担当者から「〇〇の提出をお願いします」と依頼されたときは、できるだけ早く提出しましょう。
また、審査の途中に、追加で資料の提出が依頼されることもありますが、これは金融機関が「融資に前向き」な証拠。
融資を断ろうとしている取り引き先に、あえて追加資料を依頼する金融機関はありません。
追加の提出依頼があったときも、ぜひ迅速に対応してください。
〈不利になること④〉「借入残高の記載ミス」など、書類に基本的なミスが多い
金融機関の融資審査で不利になること、4点目は「「借入残高の記載ミス」など、書類に基本的なミスが多い」です。
「書類にミスが1つもあってはいけない」というわけではありませんが、「見直せばすぐ気づくようなミス」が多いと、金融機関側でも「この人は本当にウチから借り入れしたいのか?」と疑ってしまうことに。
前項の「依頼された資料を提出しない」や、約束した時間に遅れる、書類にミスが多いような人は「ルーズで約束事を守らない」と思われてしまいます。
融資も、つまりは「事業者と金融機関の信頼」で成り立つものですから、このように思われるとマイナス評価につながり、融資には圧倒的に不利です。
できる範囲で見直しをして、基本的なミスはなくしましょう。
〈不利になること⑤〉決算書に「貸付金」がある
金融機関の融資審査で不利になること、5点目は「決算書に「貸付金」がある」です。
「貸付金」とは、決められた期日までに返してもらう約束で貸し付けた資金のこと。
決算書では「資産」に計上されますが、金融機関からもっとも嫌われる勘定科目のひとつです。
なぜ嫌われるかといえば、「貸付金」が粉飾決算に使われやすいため。
使途が不明瞭な支出や、費用として処理すべき支出を「貸付金」として資産に計上して、利益を大きくしようとする手法もあります。
できれば「貸付金」以外の勘定科目を使うようにし、どうしても他の科目では処理できないようなら、貸付先との関連性や返済条件をくわしく説明してください。
ていねいに説明して、「貸付金」が「将来返ってくる見込みがない”不良資産”ではない」ことを、金融機関に納得させることも大切です。
〈不利になること⑥〉金融機関の乗り換えを行っている
金融機関の融資審査で不利になること、6点目は「金融機関の乗り換えを行っている」です。
「メインバンクを変更すること」だけでなく、「今まで取り引きしていた金融機関との取り引きを解消すること」にも金融機関は敏感。
「メインバンクの変更には、何か大きな事情があったのではないか」
「取り引きの解消はなぜ起こったのか、金融機関と事業者のどちらから申し入れたのか」
金融機関はこういった情報からも「事業者の倒産の予兆」をつかもうとします。
不審に思われると、融資審査に大きな影響が出るため、金融機関には「なぜ乗り換えたのか」をしっかり説明してください。
〈不利になること⑦〉税金を滞納している
金融機関の融資審査で不利になること、7点目は「税金を滞納している」です。
税金の支払いを滞納している事業者は、金融機関から融資を受けられる可能性は低くなります。
日本政策金融公庫の融資や保証付き融資など、「納税証明書」の提出が必須の融資では、滞納していることがすぐに分かってしまいます。
プロパー融資では「納税証明書」の提出を求めないこともありますが、資料提出や面談のなかで滞納がわかってしまうことも。
また税金を滞納すると、地方公共団体からの補助金・融資といった行政サービスに制限がかかるなど、多数のデメリットもあります。
まずは親戚や知人から借りるなどして税金の支払いを終え、それから融資を申し込むようにしましょう。
〈不利になること⑧〉消費者金融などのノンバンクから借り入れしている
金融機関の融資審査で不利になること、8点目は「消費者金融などのノンバンクから借り入れしている」です。
消費者金融などのノンバンクからの借り入れがある事業者は、金融機関から融資を受けられる可能性は低くなります。
金融機関では、「ノンバンクから借り入れするということは、銀行や信用組合などから融資が受けられなかったからでは?」と考えます。
このようなリスクの高い取り引きへの融資は、かなり慎重になることに。
「審査時に、ノンバンクから借りていることを伝えなければいいのでは?」と思うかもしれませんが、借り入れた情報は次のような信用情報機関に登録されます。
そして金融機関は審査時に、信用情報機関にて「借入情報」を確認。
たとえ完済しても、「借り入れした」という情報は5年間は残りますので、この期間は融資が不利になる可能性が高いといえます。
〈不利になること⑨〉金融機関の融資担当者が事業者をよく理解していない
金融機関の融資審査で不利になること、9点目は「金融機関の融資担当者が事業者をよく理解していない」です。
融資審査では、融資担当者が稟議書を起案。
課長や支店長がその稟議書を確認し、問題がなければ決裁が下ります。
そのため、まずは融資担当者が「取り引き先事業者の事業内容や状況」をよく理解していることが必要です。
理解できていなければ、決裁が下りる稟議書を作成できる可能性は低くなります。
そして「融資担当者が事業者をよく理解していない理由」は、大きく分けて以下の2つです。
理由①:事業者側が説明しきれていない
融資担当者が事業者をよく理解していない理由、まず1つめは「事業者側が説明しきれていない」です。
金融機関の融資担当者は、「事業者の事業内容」をくわしく理解しているわけではありません。
しかも多くの取り引き先があるため、1社1社について深く学ぶ時間もないでしょう。
そんななかで、経営者が「事業内容」や「今後の事業計画」を、専門用語を交えて口頭で説明しても、融資担当者にはほぼ伝わりません。
会社案内・パンフレットだけでなく、必要な資料を作成して、まずは融資担当者に理解してもらうことを目指しましょう。
なお「融資担当者の理解が浅くても、稟議書にそのまま添付すれば上司も納得できる資料」が準備できればベストです。
理由②:金融機関の融資担当者がイマイチ
融資担当者が事業者をよく理解していない理由の2つめは、「融資担当者がイマイチ」です。
つまり「仕事ができない、ダメな担当者」だった場合。
たとえば、融資の申請書類を放置している、提出したはずの資料を紛失するなど。
融資担当者がイマイチでは、経営者の方がいくら良い資料を提出しても、融資が不利になってしまいます。
こういった場合は金融機関を訪れ、担当者の上司に「こういったミスが続いており、改善も見られないので何とかしてほしい」と相談しましょう。
相談時には、できるだけ「これまで起こったミス・トラブル」をメモにまとめておくと、スムーズに対処してもらえる可能性が高まります。
「融資を行う金融機関」と「取り引き先の事業者」は、ビジネスパートナーとして同等であることを忘れず、「伝えるべきこと」はしっかり伝えてください。
融資についての疑問を解消
次に、融資についての疑問にお答えしていきます。
なお「融資審査の流れ」をくわしく知りたい方は、記事「金融機関での融資審査の流れをくわしく解説!融資全体の流れや選び方も」をご覧ください。
融資を断られた場合、他金融機関での審査は不利になる?
「融資審査で拒絶された」という事実は、他金融機関では「マイナスの印象」をもたれ、融資の審査が不利になります。
それは「融資を断られる」ことが、「金融機関からリスクが高いと認識されている」という証であるため。
逆に自分のところで融資を断った事業者が、べつの金融機関での融資が決まったと聞くと、融資担当者は「自分は何か見落としていたのではないか?」と不安になるそうです。
とはいえ「融資を断られた」という結果は、他の金融機関に伝わるわけではありません。
前述した「消費者金融からの借り入れ」のように、信用情報が残るわけでもないので、確認のしようがないのです。
ですので、事業者が自分から言わなければ、「融資を断られた」という事実が他の金融機関に知られることはありません。
「金融機関に融資を断られた」ことは、誰にも言わないようにしましょう。
融資審査で金融機関が注目するポイントは?
融資の審査基準は、金融機関によってバラバラです。
そのため「A銀行では断られたけれど、B信用金庫では融資を受けられた」ということが起こります。
ですが、「金融機関が注目する根本的なポイント」は共通しています。
「最低限、ここを抑えないと融資審査は通らない」という項目で、それが次の「銀行融資の審査における3つのポイント」となります。
- 融資金がどこからどのように返済されるのか(返済財源、返済方法)
- 融資金の使途と金額が適正か(資金使途、融資金額)
- 万が一に備え「担保」はあるか(保全)
融資を申し込む際には、上記3項目を裏付ける資料を融資担当者に提出しましょう。
なお、上記ポイントについてくわしくは、記事「銀行融資の審査における3つのポイントとは?審査で通らない理由や流れも解説」で解説しています。
融資審査にかかる期間、日数は?
融資の審査期間(審査にかかる日数)は、金融機関によって少しずつ変わりますが、一般的には下表のようになります。
既存事業者の取り引き | 新規事業者の取り引き | |
---|---|---|
プロパー融資の場合 | 数営業日~2週間 | 3週間~1か月程度 |
保証付き融資の場合 | 3週間~1ヶ月 | 1~3か月程度 |
保証付き融資では、金融機関の審査のほかに信用保証協会の保証審査も行うため、プロパー審査よりも時間がかかります。
また、金融機関との取り引き実績のない新規事業者の場合も、与信調査など確認点が増えるため、時間がかかることに。
なお「書類に記載ミスがある」、「提出依頼があった資料を提出しない」などの書類不備があると、審査はどんどん後回しなり、審査期間は延びてしまいます。
あまり期日が延びると、資金使途に間に合わないことも起こり得ますので、書類不備がないことを心がけましょう。
融資を受ける金融機関の選び方は?
融資を申し込む金融機関には、次のような種類があります。
- 政府系金融機関(日本政策金融公庫)
- 信用金庫・信用組合
- 都市銀行(メガバンク)
- 地方銀行(地銀)
そして融資を申し込む金融機関の選び方として、以下の方法が挙げられます。
選び方①:事業の段階(設立年数)で選ぶ
とくに金融機関側のリスクが高い「創業・起業時」、そして「設立から3年以降」では、以下の機関・融資商品を選んでみてください。
- 創業・起業時:日本政策金融公庫がおすすめ
- 設立から3年以降:地方銀行や信用金庫・信用組合の「保証付き融資」がおすすめ
選び方②:自社の規模で選ぶ
金融機関によって融資額などの条件や対応が異なるため、規模によって以下の機関を選んでみてください。
- 小規模事業者:信用金庫・信用組合がおすすめ
- 中規模事業者:地方銀行がおすすめ
- 大規模事業者:都市銀行がおすすめ
なお「融資を申し込む金融機関の種類と選び方」は、記事「融資を申し込む金融機関の選び方を解説!機関の種類や付き合い方も紹介します」でくわしく解説しています。
まとめ:審査で不利になることを理解して、融資審査に臨みましょう
この記事では、金融機関の融資審査で不利になることを解説し、融資の疑問も解消してきました。
ぜひ記事を参考に、審査で不利になることを理解したうえで、融資審査に臨みましょう。
融資・資金繰りでお悩みならご相談ください!
『経営者コネクト』にご相談いただければ、融資や資金繰りついての知識や経験が豊富な中小企業診断士、税理士、元外資系コンサルタントといった専門家が親身にお話を伺います。
融資の準備に必要な、将来的な事業計画や経営戦略の策定、マーケット調査、新規事業の検討、融資以外の補助金・助成金のお手伝いもさせていただくことが可能です。
融資を受けるまでには、準備や審査の時間がかかります。
申請から入金までに1か月以上かかることもありますので、早めにアクションをしましょう。
『お問い合わせフォーム』よりご連絡いただければ、無料でご相談をお受けいたします。
融資の相談ができる機関のご紹介
融資の相談ができる機関として次のようなものがあり、無料で相談に乗ってくれるところも。
「融資に特化した機関」ではありませんがその分、幅広い専門家が、さまざまな支援策を提案してくれます。
各機関についてくわしく知りたい方は、上記「記事」リンク先をご覧ください。
また、経営者コネクトでは、最大1億円の補助金が得られる事業再構築補助金の応募を考える企業様向けに「無料相談サービス」も行っています。
ご関心のある方は、ぜひ下記サイトもご覧ください。